神様あのね、
神様神様、これはなんて拷問でしょうか。
「…んっ……あ」
「…こっちはどうなん?」
「…あ、…そこっ…う、ん…」
力を込めてそこをぐっと押すと、身をよじって不規則な声が返ってくる。
少しずらしてまた指で押すと、びくりとその華奢な体を震わせた。
嗚呼……もう
「痛ってぇ!お前っ…力入れすぎだ!!」
「せやかて…」
「ったく、肩揉みもできねーのかよ」
シエスタ中に寝違えて首痛めたー言うて、首筋をトントン叩いて訴えて来たロヴィーノに肩揉みしてたんはええんやけど…
ぐっ、ぐっとツボを押すたびにあっとか、んっとか、なんちゅうか…こう、腰にくる感じの声ばっかり漏らすんや。押したところが痛みに効いてるのはええことなんやけど、正直親分、あとどんくらい理性保てるか分からへん。
「もうちょい左」
「ここ?」
「うん、そこ……っ…あ」
まーたそないな声漏らしてぇ…!しかも首筋めっちゃ細くて白すぎんねん!吸血鬼が真っ先に噛み付きたい首筋ナンバーワンやんな。まあ、俺は吸血鬼ちゃうけど…凄く噛み付きたい。
「っ、……はぁっ…」
ロヴィーノがまた声を漏らす。今度は砂糖をどろっどろに溶かしたような甘ったるい吐息を混ぜて。
もうほんま、その声勘弁したってぇ…。あかん、もう…
「なっ、アントーニョ!?」
肩に置いていた両手を首に回してその首筋に唇をあてがうと、予想通りロヴィーノが驚いて振り向く。ほんま、期待を裏切らなくてええ子やねと内心ふっと笑んで、わざわざそちらから近付けて来てくれたロヴィーノの唇に、自分のそれを押しつける。
「っんぅ……ふっ…」
糖度の上がったロヴィーノの漏らす声と、男にしては柔らかい弾力を持つ唇を堪能しつつ、今度は舌をねじ込む。快感に耐える表情が何とも堪らへん。
酸素を求めてどんどんと胸を叩くロヴィーノを口付けから解放してやると、その細い肩を上下させて涙の溜まった潤んだ瞳でこちらをきっと睨み付ける。そんな目も可愛え。
「お…っ前、何いきなり…!」
「どんな顔してそないな声出しとんの?なあ?」
「声、って…」
「肩揉みくらいでんなえっろい声出されたら、親分あかんやんか」
「えろ…っ!?」
くいと指先でロヴィーノの顎を持ち上げ、顔を覗きこむ。
「俺はそんなえろい子ぉに育てたつもりはないで」
「育てられたつもりもないな」
「せやかて、さっきのえろかったやん」
「うるせぇ!俺はただ…!」
そう言いかけては、形のいい唇をぎゅっと噛んで、言葉を遮断してしまう。
親分、その言葉の先は知ってんで。キスがしたかった、やろ?肩揉みやってそのための口実やったんやろ?賭けてもええわ。
ああ、そない力いっぱい噛んだら可愛え唇に歯型ついてまうで。
「ロヴィーノ」
名前を囁けば、素直に反応してゆるゆると完熟トマトのような綺麗な赤色の顔を上げてくれる。
「…キスしてもええ?」
一瞬目を見開いて、またすぐに俯いたと思ったら、くんと袖を軽く摘んで
「したいなら…勝手にしやがれこのやろー…」
まあびっくり、今日のロヴィーノは特別素直さんやな。
「…おおきに」
顔が綻ぶ。手が触れる。肌は一層赤みを増す。
小さな弾力と共に引き合うふたつの唇。
神様神様、これはなんて幸せでしょうか。