擬人化



星の声。
星の瞬き。
星の濁流。
音を立てながら、頭の中で轟々と渦巻く星々。
それはただの石ころだったものが、己という光に照らされて眩いほど己を照らし出す。
この頭の中は世界にとって摂理であり輪廻であり希望であり絶望でもある。

すべてが己の中。
すべてが己の手のひら。

この一光の星も、また。




「カミサマ」
「…ん」
「マタ、視テイタノデスカ?」
「助かった。お前がいなきゃ半世紀くらいはずっと捕らわれてた」
「…星、デスカ?」
「うん…あいつら一つ一つ話すし、視せるから…。視始めるときりがねえや。な、コーヒーくれ」

影の淹れたコーヒーというか既にミルクが多いカフェオレを飲みながら、一息つく。
仕事とはいえ、半世紀も捕らわれちゃ世界がガタガタになってしまう。
過去に捕らわれた時は、世界戦争なんかが起こってた。
星達には悪いけど、まだまだ安心はできない。
いつか全てが収まったら、まとめて全部聞いてやろう。

「影…」
「ハイ」
「ぎゅってして」
「ハイハイ」
「ちょ、ばか、影のままぎゅっじゃなくて!縛られたくはないから!」

影のまま抱き付かれると、まさに何かのSMプレイなんじゃないだろうか的なことになる…。
縛り的ななにかで。
俺の反応が予想通りだったらしく、影は口元を緩ませた。
途端に、頭を撫でる手が人間のそれに変わる。

「冗談ですよ」
「…ん」
「神様はこうされるとき、いつも幼い姿になりますね」
「ん、落ち着く。ずっと人型でいればいいのに」
「私は影ですから…必要とあらばいつでもなりますけど」

頭を撫でる大きな手が気持ちいい。
甘えられるって素晴らしいな。
ああ、こいつが女の子だったらなおいいのに。
男でもいいけどさ。

「今何かよからぬことを考えましたね…」
「え、いや別に…」
「嘘をつくとき、目の色が緑がかるのですよ、あなたは」
「…マジ?」
「冗談です」
「…はてな…」

クスクス笑うはてなに、思わず自分の顔にも苦笑が張り付く。
何世紀と付き添ったこいつには、なにも隠せやしない。

「あーはてなー結婚してくれー」
「寝言は寝て言いなさい」
「神様なのに…」
「そんな事ばかり言っているとΣ様に叱られますよ」
「ふぁーい」

さあて、一息ついたところでお仕事頑張りますか。
世界のために。



2009


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