※多少そういう話、事後あり




緑川のセックスは激しい。
女が相手でもこんなに容赦なく穴を抉るのかと考えてしまう。
今の相手は男の杉江であるから、多少は丈夫に出来てはいるのだろうが、正直週に四回は体力的にも精神的にもきつい。
殆どの確立で意識を手放して終わりを迎えるその行為は、杉江にとって少しばかり限界を感じていた。
何も、最初からこうだったわけではない。
初めは優しく、それこそ処女に一つ一つ手解きをして、不安にさせないような配慮があった。
それが今は無理やり服を剥がされて、気付くとジョイント、ガツガツと食われまくってブラックアウト。
何のことはない、緑川は元からこういうやり方を好む男だったのだ。
慣れとは怖いもので、杉江も緑川のその乱暴なセックスにそれなりに順応してきている。
その事実が何よりも腹立たしく、悔しく、少し呆れを感じ。
ついに、杉江は反抗に出た。

「…宏さん、」
「ん?」
「しばらくセックスやめましょうか」
「えっ」
「忘れたんですか?明後日からキャンプでしょう。合宿なんですから当たり前です」
「…そうか、そうだな…でも…なぁ…」
「言い訳はなし。お願いも聞きません。はいけってーい、おやすみなさい」
「お、おい勇…え、マジで寝たのか?おいっ」

珍しく狼狽する緑川に少し優越感を感じながら、杉江は深い眠りに入っていった。




合宿中、杉江は何事もなく練習に明け暮れていた。
緑川も初めは二人になる度に渋っていたが、合宿中に盛るなんて最低です、と一蹴すると何も言ってこなくなった。
久々ののびのびとした日々に、自然と気分も浮き立つもので。
練習はハードながらもプライベートで疲れを感じる事はなくなり、杉江は機嫌よくそのキャンプを過ごしていった。
対する緑川の心中など、少しも察することもなく。
緑川の異変を杉江より早く感じたのは、意外にも杉江の隣にいる黒田だった。

「なあ杉江」
「なに?」
「最近さあ、緑川さん変じゃねえ?」
「そ、そう?あんまわかんねえけど…どの辺が?」
「なんつーか、さっきミニゲームしただろ」
「ああ」
「そん時さ、すっげー悪寒した」
「悪寒?風邪じゃないの」
「それがよー、なんか気になって振り向いてみたんだよ。そしたら、緑川さんがコーチングしながらこっち見てた」
「え、黒田を?」
「いや…多分お前だなありゃ」
「ちょ」
「お前なんかしたのか?緑川さん怒らせるような事。睨むように見てたぜ、気付かないお前も凄いけどよ」

ありゃ人一人殺せる目線だったなぁ、と頭を掻きながら言う黒田に、杉江は只ならぬ悪い予感を感じた。
頻繁に求められるセックスをしばらくやめよう、と提示したのは自分であるが、よく考えれば緑川にとってはあれが普通なのだ。
週四で致していたセックスを、もう二週間ほどお預け状態。
緑川に限界が近付いている。
凄まじい程のアピール?は先の黒田の報告からして明らかであった。

「す、杉江、大丈夫か?」
「……」

合宿はあと三日程で終わる。
その後は、当たり前のように家に帰り、我慢した緑川によくできました、と軽いご褒美ならぬ自分を捧げよう。
と、杉江は軽く考えていたのだが。
今の猛獣のような緑川は、危険以外の何者でもない。
杉江は体温がまるで氷点下になったような気がした。

「…………ころされる…」
「は?何が?ちょっ、すぎ」
「あ、危ない!」

第三者の声、あれは丹波だろうか。
聞こえた瞬間、杉江の顔面にバシン!とボールが命中した。
かなりの勢いがあったらしく、後ろに倒れてしまうほど。
幸い芝の上であったから後頭部は何事もなかったが、それより顔面が痛い。

「す、杉江ーっ!大丈夫か!?なんで避けなかったんだよ!」
「おわぁっ!?杉江さんすんません!俺の野性味溢るるシュートのせいでー!!すんませーん!!」
「…くろ、なつき…うるさい…」
「うわぁぁあ!杉江さああん!鼻血!うわああティッシュ、ティッシュ!ない!うわああ!」
「つばきも、わかったからおちつけ…いてて」
「鼻、折れてないか」
「っ!…だ、だいじょうぶれす」

がやがやと集まってくるメンバーの中、唯一緑川が背中を支えて杉江を抱き起こす。
いきなりの接触にぎくり、としたが、緑川は至って普通だ。
黒田が言っていたような人一人殺すような目はしていなかった。
はらはらしながら鼻を抑えていても流れ出る血は止まる気配はなく、練習は少しの間出来ないかもしれない。

「…ちょっと、いむしついってきまう」
「俺もついていこう。みんな、練習を続けといてくれ」
「ふぇ」
「達海さん、ちょっと行ってきます。いいですね」
「はいはい」
「緑川さんなら安心だな!んじゃ練習続きしようぜー」

あっけらかんと笑いながら言う丹波の声に、皆も何も言わず元の練習に戻っていく。
その中でも黒田と達海は怪訝な顔をしていたが、がっちりと肩を掴まれた手からはどうあがいても逃げられない。
そして、杉江は気付いてしまった。
黒田の言っていた、緑川の獰猛な目で見られている事を。



カウントダウン
(逃がさないよ)



「なあ、監督」
「んー?なに、くろちゃん」
「緑川さん、杉江に何もしねえかな…なんかわかんねーけど、杉江に怒ってるみてえでさ」
「んー…いいんじゃない、やらせとけば。流石に限界みたいだし、あれはしょうがない」
「は?」



気が向けば続きます


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