OTE後
手が焼けるほど熱い。
それは比喩的なものではなくて、言葉通り。
「あ、つっ…!」
「…!悪い、大丈夫か」
適当に食材を買って、夕焼け空を見ながら二人で歩く。
小さな幸せを噛みしめて、そっと手を繋ごうとしたら燃えるような熱さに指が火傷した。
反射的に引っ込む手を、熱くない手が追いかけてくる。
「…まだ、冷めてないんや」
「夏ですもんね、迂闊でした」
「難儀な腕やさかいの…苦労かけてすまん」
「いんや。右腕が機関銃な彼氏って、自慢できますから。俺は不満なんてないです」
「…秋山」
「なかなかいないですよ、こんな格好いい彼氏」
そう言ってから、右から左に移動して、人間の手を握る。
こちらの手は、少しだけ温かい。
綺麗な金髪と白い服がオレンジの縁に彩られて、まるで芸術品のようだと思う。
そんな事を言えば怒り出して来そうだから言えやしないけれど。
「…なんや」
「いや、別に」
「いらん事考えとったやろが」
「さあ?」
「…おどれは嘘付くとき片眉が上がるんや」
「……」
「観念せえ」
変な所で目聡いんだから。
そう頭の隅で悪態を付き、 子どもみたいに繋いだ手をぶらぶら揺らすと、ガキか、とまた怒られた。
けれども、あまり嫌でもないらしく、振り解く事はしなかった。
「ねえ」
「あ?」
「また、あんな事があったら…俺を守ってくれますか」
「……」
「もし、ゾンビになっても…龍司さんが、その腕で殺してくれれば…俺は…」
「秋山」
「……」
「あんまり泣きよると、襲うで」
龍司さんにそう言われて、ぐい、と無理やり腕を引かれる。
気付くともうマンション前で、半ば連れ込まれるように中にはいる。
部屋に到着すれば、すぐさま鍵を閉めて龍司さんに抱き込まれた。
俺は背が低い方ではないし、龍司さんみたいにがっしりした人に抱き込まれるなんて、最初は想像出来なかった。
でも、すごく、心地良い。
「お前が、好きや」
「…はい」
「大事なもんがおらんなるんは、もう嫌なんや」
「…龍司さん」
「死んでも、守ったる」
じりじりと痛む指の火傷のように、胸が焦げる。
龍司さんの腕は、もうだいぶ冷めていた。
約束だよ
(守って貰っても、あなたが死んじゃあ、一緒に死ぬしかないじゃないか)