みじかい
じゅう、じゅう。
くるくる。
たこ焼き屋さんにしてはごつい左手で油を引いたり、材料をを入れたり。
機関銃に変わる腕で錐を持って、器用に丸くなった生地をくるくる回していく。
アンバランスさがどこかおかしくて、つい顔が綻んでしまう。
「なんや、ニタニタしてきしょいな」
「ん?そうですか?」
「そない顔で見られとったらやりにくいわ、帰れや」
「いいじゃないですか、見るくらい。減るもんじゃないし」
「…たこ焼き食いたいんか?ほなら後ろで食っとれ」
半ば強引に屋台の後ろに押し込まれて、たこ焼きが乗った皿を手のひらに乗せられてつまようじをたこ焼きのひとつにぶすり、と刺された。
大人しくそこらにあった椅子に座り、つまようじが刺さったたこ焼きを口に運ぶとやはりおいしい。
目の前の男はせっせとたこ焼きを作り、たまに通りがかる人に呼びかけたり、買いに来る人に売ったり、割と忙しそうだった。
ぼんやりその様子を見ていると、ちょうど逆光で逞しい背中がくっきりと光に縁取られている。
目映い金髪が暑くなり始めた日光に透けて、きらきら輝いているように見える。
「きれいだなぁ」
「あぁ?なんや?」
「なんもないでー」
「へったくそな関西弁で喋りくさるな、腹立つわ」
「はぁい。…ふふ」
龍司を見ていると、たこ焼きが冷めていってしまうが、秋山にとっては至福の時間だった。
たこ焼きを作っている背中を眺めて、話し掛けられると冷めたたこ焼きを口に運ぶ。
減ってないやないか、ときつい口調で叱られたりもするが、それもまた楽しかった。
後ろから見る龍司は、本当にきれいでかっこいい。
秋山が冷めたたこ焼きをまた一口食べて前を見ると、今度は龍司が秋山を見ていた。
逆光で表情はあまりわからない。
「それ食ったら帰るんやぞ」
「はぁい。ありがとう、龍司さん」
「…ふん、」
鼻ででも、共に笑ってくれる事が嬉しい。
秋山は確かに幸せを感じて、またゆっくりたこ焼きを食べ始めた。
至福の時間
(いつかたこ焼き以外も食べたいな)