メンタル系




すきだなあ。
そう思い始めたら最後なんだと、マツバは思った。
同性で、性格も真逆に値するであろうミナキに対して友人以上の感情を宿してしまったマツバの心。
はじめはただの他人だったのだ。
それがふとした事から出会い、会う回数を重ねるごとに好意は進化していき、他人から知人へ、知人から友人へ、友人から恋愛対象へ。
もともと心を開ける人間が少なく、女性とも深く関わることも少なくて。
ミナキしかいない。
ミナキしかいなかったのだ。
修行や稽古や世話の人間ではなく、唯一ミナキがマツバにとってくくりの中に入らない人間だった。
羨ましくもあり疎ましくもあり愛しくもある綯い交ぜな感情が、マツバを何年も苦しめていた。
伝えたい想い。
だが、伝えたら全て無くなってしまう。
無くなってしまうのだ、今まで築き上げた「親友」と言う名の関係性は。
マツバはそれだけは避けたかった。
どうしてもミナキと心が離れるという結果にはなりたくなかった。
なんという幼い、青臭いジレンマだろう。
二十と少しの齢を生きたところで、マツバにはミナキのような行動力も勇気も身につかなかった。
旅で疲れた体を引きずってミナキが家に寄る度に、マツバはまたミナキくんはこんな時間に、と呆れたふりをしながら内心は歓喜している。
ミナキが部屋の真ん中で着替えている度に、マツバはみっともないなあ、と窘めるふりをしながらちらちらと服の間から垣間見る肌に喉を鳴らす。
夜も更けてミナキが寝静まった頃、マツバは瞑想をするふりをしながら瞼の裏で煩悩の塊を何度も何度も脳に呼び起こす。
それの繰り返しだ。
それを繰り返すだけだ。
それがマツバにとって、ミナキに対する最大級の愛だった。
それ以上を求めれば、ミナキはきっとマツバから離れてしまう。
ミナキは自分とは違う。
マツバは何回もそう考えた。
愛されることは叶わない。
ならば、気付かれることなくこの想いを一生抱いて、墓まで持って行く。
それが、マツバにとって最大級の至福だった。

「マツバ」
「…うん?」
「いや…泣いているかと思ったんだが、気のせいだったか」


想って往く


(それはきっと、ぼくが   だからだね)





ちょっと実験的


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