なんだこれ。
漫画とかでよくあるみたいな。
目が覚めると隣に裸の男が寝ていた。
ちゃっかり自分も裸で。
これって、いわゆる朝チュン?

「ん…ぅ、」
「ひっ」

動いた。
いや死んでいても困るのだが。
シーツに散らばる、自分より少し黄みがかったストレートの金髪。
何より驚いたのは、顔。
全く同じなのだ、自分のそれと。
毎日見ている鏡の中のそれと。
マツバは胸の内で謝りながら寝ている男の左腕を上げて腋の近くを凝視した。
自分には、ここにほくろがある。
そして、この男にも。
…ふぅ。
取り敢えず落ち着こう。

「…これってなんだか、」
「ミステリー?」
「ぎゃあああっ!?」
「いきなり叫ぶなんてひどいな」
「お、起きてたのか…驚かさないでくれよ」
「声も一緒なんだな、俺たち」

男が妖しく口角を上げ、マツバの腰にしがみついてくる。
素肌に当たる髪がくすぐったい。
マツバは何が何だかわからないまま再び布団の中に引き込まれ、そして男に抱きつかれた。
体温も同じらしく、怖いくらいに心地いい。

「きみもマツバだろ?」
「も、って…」
「俺もマツバ、エンジュジムリーダー。俺が視たきみもそうなはず」
「マツ、バ…?」
「そう。千里眼だって持っている」

男のアンバーの瞳が揺らめく。
自分のそれと同じだ。
何となくだがわかる。
この男も千里眼を持っており、そして自分と同じだということも。
目の色や髪型は違えど、確かにこの男は自分と同じ。
と、ぼんやり考えていると。
目の前のマツバに唇を奪われた。
突然の事で頭の処理が追いつかず、マツバはされるがままにしかできず。
あれよあれよと口の中まで舌の侵入を許してしまい、ぬめるそれに舌を絡め取られて変な声が出る。

「んぅ、な、にを…」
「む…ん、ふ」

くちくちと粘着質な音が鼓膜を刺激し、マツバは同じ声で喘ぐ相手にただならぬ興奮を覚えた。
相手も同じような心境らしく、頬を染めて必死に舌を求めてくる。
何故かそれが可愛らしく見え、マツバは相手の首を指先で撫でてみた。

「あ、ぅ」
「こんな声もでるのかい、きみは」
「生憎、きみと同じだよ…っん」
「ぼくより感じやすいんじゃないのかい」
「そんな、こと」
「誘ったのはきみなのに、もう出来上がってるじゃないか。…可愛い」

マツバが髪に隠れた耳を舌でなぞり、軽く甘噛みしてやると、相手のマツバは高い声をあげて涙ぐむ。
長めの金髪の間にちらちら見えるアンバーの目が欲情を煽る。
もしかして自分の目もそうなっているのだろうか。
そう考えると、表しがたい奇妙な興奮がせり上がってきて、マツバは喉を鳴らした。


メルトダウン


(そうして二人で、溶け合った)


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