里親パロ
年齢操作あり。
基本庶法07*仲権のとーさん
「とーさん!とーさーん!」
「おお息子よー!前と全然変わってねーなー!」
「のびたし!背のびたし!!」
「おかえりなさい、淵さん。また長くかかりましたね」
「おー法正!まあ、ちょっとややこしくてな。ほれ、土産の饅頭」
「ああ、ありがとうございます。徐庶も喜びますよ。それで、今日は食べて行かれるので?」
「ん、お前等がいいなら馳走になろうかと!」
「くく…相変わらずですね。では、今日はすき焼きにしましょうか」
「「すき焼きー!!」」
両手を上げて喜ぶ様子も似ていて、思わず口元が緩む。
夏侯淵。
仲権の実の父親だ。
長期に渡って管轄していた捜査がやっと一段落ついたらしく、やっと今日帰ってきたのである。
母親は、いない。
「…ん、なんかちっこいのが増えてるな?よー坊主!」
「あ…あの、こんにちは」
いつの間にいたのやら。
俺の足に隠れながら淵さんに挨拶する伯約は、どこか恥ずかしいのかズボンを強く握ってくる。
「ああ、養子の姜伯約です。仲権と同い年で、よく遊んでくれてますよ」
「へー!じゃああんたら、正式に夫婦になったのか!こりゃあめでたい!」
「はは、そうなれたら言うことはないんですが。で、どうします?また夕飯の準備が出来たらお呼び致しましょうか」
「そだな、荷物の整理とかあるし。ま、適当に頼むわ」
「はい、ではそのように。また後程」
「じゃーおれもいくな、はくやく、かーさん」
「あ?まだこいつ、母さんなんて言ってんのか!すまねえなあ」
「いいえ、気にしてませんから。じゃあ後でな、仲権」
「おー!はくやくもあとでな!」
「う、うん…」
夏侯親子が出て行った後、買い物に行かなくては、と動こうとしたが、動けなかった。
伯約がまだズボンを掴み、何かを言いたげに見上げてきている。
膝を折って目線を同じ高さに合わせてみると、ぎゅ、としがみつかれた。
「俺は徐庶じゃないぞ。お前は徐庶担当だろう」
「う…」
「どうした」
「…ちゅうけん、かえってしまいました」
「……あぁ、」
そういえば、伯約が家に来てから、仲権とは一度も離れたことがなかったように思う。
伯約にとっては父親とわかっていても、知らないおじさんに連れて行かれたような感覚なのかも知れない。
「伯約、またすぐ家に来るぞ」
「わかってはいます…。でも…でも…」
「……。仲権の好きな焼き豆腐、沢山買ってきてやろうか。お前の好きなうどんも、山ほど」
「…!うどん!」
「くく…単純なやつめ。早く支度してこい」
「はい!」
あんなに堅く握り込んでいた手を開いて、せわしなく上着を取りに行く伯約がおかしくて仕方ない。
好物で釣られるとは、所詮まだ子どもである。
伯約が準備をしている間に俺も上着を着てマフラーを巻き、財布を尻ポケットに突っ込んだ。
支度できました、と玄関に来た伯約の掛け違えたボタンを直してやり、小さな肩掛け鞄にエコバッグを入れてやる。
手袋を装着した手を繋いで家を出れば、やはりまだ寒い。
徐庶が編んだニットの帽子を被った伯約は暖かそうで、少し羨ましい。
うどん、たのしみですね、と言う伯約は、もう今日の献立がすき焼きだということは覚えてないんだろうな。
+ −