千々の罪 | ナノ



・一族についての記述

家伝神道を礎に、古神道を今なお拝する一族としてその道では知られているようだ。
古神道は「縄文神道」とも呼ばれている。
代々一族に伝わる神々、通称「天狗様」より与えられた印をもちいた独自の修祓や加持祈祷を行う。
その他にも、血や石を神聖視し術にも取り入れているのは<千羽・月守>ならではだろう。
出雲や四国といった各地に伝わるような退魔の法など数多に及ぶ術式を用いることもある。

とりわけ石と血を神聖視することからいっても、古事記や日本の記紀が記される以前、出雲の山間地で日本古来の名もなき神々に仕えていたのではないかとされる。
その名もなき神々こそが「天狗様」だろう。本家の者にしかその姿は見えないとされている。
日本神話においても血をもちいた浄化や呪(まじな)い、石を御神体として信仰する風習も見受けられる。
中でも我が一族はこの国の神道が統一される以前の本来の古神道を今でも拝しているのだと考えられる。

・タマヨリヒメについての記述

高日子におけるタマヨリヒメとは、神霊を宿す女性。巫女のことである。
その名は日本各地の神話や古典などに登場する。
ただこの地においてタマヨリヒメとは古事記や日本書紀などの日本神話における皇族の祖先神を指すものではない。
全国にタマヨリヒメという名の神を祀る神社が鎮座し、その多くはその地域の神の妻(神霊の依り代)となった巫女を神格化したものだと思われる。
つまり人柱として捧げられた女性たちのことを示唆していると推測される。
高日子の、ひいては我ら一族の祖も彼女らの血筋であるといえる。
そのために本家の者たちは犠牲を強いてまでも高日子山を、ひいてはこの地を守護しているのだろう。

・高日子の伝承についての記述

この地にまつわる伝承を元に私はある仮説を立てた。

古来より月が赤く染まる時、高日子の地は厄災を齎す穢土(えど)となった。
タマヨリヒメとは我が一族の祖先であると見てまず間違いはないだろう。
そうであれば我が一族がこの地と高日子の山を守るために存在していることが証明される。

タマヨリヒメがこの地を整え、治めたことにより高日子の地が生まれた。
元々この地が不浄の土地であり、厄災を恐れた人たちが寄り付かなかったことは明白だ。
数十年から百年に一度、霊場などの特性ゆえ不浄が満ち月が赤く染まるころになると高日子の地に災いが降り注いだのではないだろうか。
それをタマヨリヒメが自らの血を使いこの地を清めたことで人々が安心して住める土地になったのだろう。
以後、赤い月の厄災を鎮めるためにタマヨリヒメがこの地に留まったという点からしてもこの地にタマヨリヒメを祀る神社や寺が多いのがわかる。
恐らくこの地を治める際、人柱となった者たちを丁重に供養または祀ったものの名残と推測できる。
定期的に起こる厄災を鎮めるという命を、時の権力者に命じられたタマヨリヒメがこの地を訪れたとも考えられる。

なにせ我が一族はこの国の各地に散らばり、人知れず裏からこの国を守っているのだから。
とりわけ優秀な者たちが集められた本家の者は恐らくこの厄災を鎮めるためのタマヨリヒメたちなのだろう。
一族の者たちは一体なにからこの地を守ろうというのだろう。
気狂いを出して起きながらも古き因習や仕来りを保たねばならないほどなのか。
私はそこまでして一族が鎮めようとする厄災の正体を知りたいと思う。

そうすればもう二度とこの地のタマヨリヒメは増えないと思うのだ。

・一族に伝わる印についての記述

一族に伝わる印は赤い瑪瑙石に刻まれている。
独特の印が星に似ていることより「星石」とも呼ばれている。
「星石」は赤い瑪瑙石に彫り、その印に製作者の血に浸して製作される。

それも「天狗様」と愛称で呼ばれる、千羽・月守が仕えてきた家伝神道の神により与えられたものらしい。
その他に、一部の地域で使用されている「籠目印」も石に刻み使用することもある。
そちらは星石にならって「籠目石」と呼ばれる。
一族の者はその二つの石を生まれたその時から肌身離さず持ち歩くことを義務付けられている。
<子饗(こふ)の石>として母親が代々自分の子供に星石を授ける習わしだ。日本神話などでは鎮懐石や殺刹石などの別名でも見られる。

この印がどのような経緯で伝わったのか知る者はいない。
「星石」に刻まれる印は五芒星にも見えるが、中央にある目のようにも捉えれる形が最大の特徴といえるだろう。

西東洋における五芒星、あるいは籠目と呼ばれる六芒星はいずれも聖なる印として退魔の印としても広く使われ、魔術師の印としても知られている。

天狗様が一族の祖に<子饗(こふ)の石>を託した理由はこの地を治めるためであることはまちがないようだ。
本家の者に付き従う使い魔を生成する護法童子法なども天狗経と呼ばれたものに由来する。
やはり一族と天狗様との深い接点があるのはまちいがいない。

・一族の印を記した図

・旧き印、星石の製作過程について記す

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この手記を読んだ探索者は以下の情報を得られる

知識として存在していると認知できる。地味にアイディアロールなどの役に立つかもしれない。

・<護法童子法>
一族における使い魔の生成方法。
元は鬼や天狗、龍神といった異形神を鳥、狼、犬、狐、蛇、猫、童の姿に転じさせて外敵から身を守るための式などにしていた。
古来より天狗経や密教、修験者に伝わる護法善神。護法神、あるいは諸天善神とも。動物霊なども使用する。

・<子饗(こふ)の石>
安産祈願、子供の健康祈願もろもろなどの願いを母親が込めたお守り。諸説あるが子負の原の石というのが名の由来とされる。出産を遅らせるためのものとして利用されたこともある。
多くの風土記、神話や古典などにも鎮懐石あるいは月延石・児饗(こふ)という別称等で登場している。

・一族の印を記した図

・一族の<旧き印>の形と「星石」「籠目石」、および「子饗(こふ)の石」制作方法。

<旧き印>

「旧き印」および「籠目印(かごめいん)」の守りの作成について。
石など印を刻むものを清めるための準備と儀式に丸1日の時間が必要となる。
1POWと1D4ポイントの正気度をコストに制作する。
そのために少なくとも1〜3日前から精進潔斎を行っておく必要がある。
旧き印を活性化させる際に<ひふみ祓詞による祓い>を唱えると活性化を手助けしてくれる。また、その呪文から得られる効果を一度だけ発揮する効果を付随する。

※精進潔斎とは
簡単に言えば「野菜中心の食生活をしてどこにも行かずなにもせず清潔な生活を送ること」
心身を清め、清潔な服を着用し、不浄な場所へ行かない。その間の食事は酒・肉類・魚類など、香辛料などの刺激物を絶った精進料理を食する。
早朝に水を浴びて沐浴(もくよく)をするか、湯浴みして身体の汚れを落とし、清潔な服を着て、清浄な部屋(家の中で神棚を祀っている部屋など)で札などの制作をするとより強力なものとなる。

具体的な禁物
亀の類、牛、雁、酒、鰻、五辛、生大根など。


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