千々の罪 | ナノ




探索者たちが見つけた随分と古めかしい黒い革張りの手記に記された日付は大正時代初期のものだ。
途中の数ページほど破り取られた跡がある。

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我が一族がこれ以上、私のような者のせいで罪穢れを流さぬよう祈りこの手記を遺す

私は罪を犯した。民俗学者としての好奇心から、我が一族が秘匿していた真実を暴こうとした結果だ
一族が気狂いを出してまで、あの本宅の書庫に所蔵する稀覯本(きこうぼん)を保持し有能な者に読ませる理由が今ならわかる
私の遠縁にあたる青年が気狂いとなり、私を襲ったあの日
恐怖のあまり自室へと戻った私が机の上に置かれていた見知らぬ古書を手にしてしまったのがすべての始まりだ

あの本はこの世に存在してはならないものだ

高日子の山には王がいる。黄衣をまとう邪な王が、そして山の暗い洞窟には王の配下である白蛆が絶えず這っている
私は王からすべてを与えられた。知ってしまったのだ
かつて私と同じように一族の人間が<赤の供物>を捧げ、あの本宅の書庫を潤わせたのだと
あそこにあるのは王が所有する知識の写しだ

狂った私のいくつもの罪を覚えている
私の犯した罪により再びこの地に『赤き月の厄災』を招いてしまったことも

私が得たすべてをこの手記に記す。血塗られた罪を繰り返してはならない
あの山には人智を越えた化け物がいる。
そしてそれを鎮め、この高日子の地を守るための祠と、我が一族のタマヨリヒメたちが眠る地でもあるのだ。この高日子山は

これから私は本家で処理される
本家が祀る、天狗様が待つ地下の祭壇にて私は柱となる
この命ををもってあの山を封じるのだ。私が招いた厄災とともに
それが贖罪となるのならば悔いもない
力ない私があの山に眠るタマヨリヒメたちと同じ役目を背負えるのなら引き受けよう

最後に、戒めと懺悔の証として私が見知ったいくつかの呪文を記す

私の犯した罪より、力ない者たちをすべて一族から追放、または切り捨てるようこれを一族の規律として定めるべきだと提唱しこれを私の遺言とする
願わくは私という罪をもって一族の仕来りと因果を絶てるよう次代に託す

●月×日 地羽真護 

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この手記を読んだ者は「1/1D3」の正気度ポイントを喪失する。
そして以下の呪文を得る。

・<人を気絶させる遠当法>
神道系の咒(まじない)の略言。一族内では魔導書を読んで発狂した者などを即座に気絶させる方法として用いる。
上位の神話生物以外なら大体効く。基本対人用。

対象の10m以内にいることが発動条件。
コストとしてMP3、正気度1ポイントを消費。
対象と自分のMPを抵抗表に従って戦わせる。成功すれば1ラウンドの間以下の祝詞の詠唱に成功すれば威力を発揮する。

「あんたりをん、そくめつそく、びらりやびらり、そくめつめい、ざんざんきめい、ざんきせい、ざんだりひをん、しかんしきじん、あたらうん、をんぜそ、ざんざんびらり、あうん、ぜつめい、そくぜつ、うん、ざんざんだり、ざんだりはん」 と唱えた後、一拍手する。

咒の効果は1D6ラウンド続く。3D10分経過で効果は消え完全に回復する。
回復後、この呪文を受けた対象は1/1D6+1の正気度を喪失する。

・<善悪探知法>
神道系のまじない。
相手が自分にとってどんな存在なのか見抜く。初対面だとより効果がある。
対面するなどしたさい折を見て目を閉じ、以下の呪文を心の中で一度唱える。コストはMP1とする。

「神火清明(しんかせいめい) 神水清明 神心(しんしん)清明 神風(しんぷう)清明 善悪応報(ぜんあくおうほう) 清濁相見(せいだくそうけん)」

・<ひふみ祓詞による祓い>
神道系の咒。四十七からなるひふみ祓詞は古神道系の祓詞である。
呪文の使い手に向けられる色々な物理的な攻撃を一度だけ無効にする呪文。1MPと1ポイントの正気度をコストに下記の詞を詠唱後、即座に効果を発揮する。

「ひふみよいむなや こともちろらね しきるゆゐ(い)つ わぬそをたはくめか うおゑ(え)にさりへて のますあせえほれけ」

あらかじめ呪文をかけておくことも可能。
戦闘時の使用は1ラウンドに1回のみ可能とし、自動成功の回避と同じ扱いとする。
その間呪文の使用者は他の行動をとることができない。
また、<旧き印>を作成する際にも併用すると同じ効果を得られる。


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