王子を迎えに


一日の授業を終えて、放課後になると直ぐ、堀と名前は部活のために教室を出た。

二人はいつも、活動場所である体育館に着くと、ある人物を探すことから部活を始めていた。勿論、ある人物とは鹿島のことであり、辺りを見渡すがやはり彼女の姿は見当たらない。二人は顔を見合わせて、ため息をついた。

「…いねぇな。」
「…そうだね。」

堀は、いつも通りの部活の始まりに「くそ!またかよ!」と頭を抱え、それを見た名前は、彼の肩に手を置いて「まぁ…いつもの事だよ…。」と宥める。

この時、二人はお手上げだといった気持ちで鹿島のいない体育館を眺めていた。

「仕方ないから探しに行くか…。」
「もう、これ日課だよね…。」
「嫌な日課だな。」

これには、堀も名前も苦笑を浮かべることしか出来なかった。

来ないなら放っておけばいいのに、ついつい手を焼いてしまう。そんな自分たちを情けないと思いながらも、何だかんだで鹿島には甘く王子としての彼女を欲してしまうのだ。

その後、二人は体育館から出て鹿島を探し始めるが、いくら探しても見つからない。堀は、段々と怒りの感情を募らせ始め、顔に青い筋を浮かべていた。

「あいつ…何処ほっつき歩いてんだよ…。見つけたらタダじゃすまねぇ…。」
「ナンパでもしてるんじゃない?ちょっとジェラシーだわ…。」
「なんで、お前が嫉妬してんだよ!」
「だって!私の鹿島だよ!」

あくまでも、鹿島は自分のものだと言い張る名前に、堀は「もう勝手に言ってろ!」と呆れた顔をする。この様な、どうでもいいことを話ながら歩いていると、2年生の階に探していた人物が野崎を含む数人の友人と話をしているのが目に入ってきた。

どんな場所でも、キラキラと光る学園の王子様…やっと見つけた彼女こそが鹿島遊である。

「あっ!鹿島いた!」

名前がそう叫んだと同時に、堀は鹿島がいる所まで全速力で駆け出した。

「てめぇ鹿島!!遅れてんじゃねぇよ!!」

堀は獲物を威嚇するかのように叫びながら、鹿島に蹴りを一発お見舞いする。 助走つきの蹴りの威力は半端ではなく、堀の言葉通り鹿島は悲惨な状態になっていた。

これを、その場にいた友人たちは驚いて見ている。しかし、名前はいつもの見慣れた光景なので笑って見ていた。床に散った鹿島を見て、可哀想だと思い彼女に手を差し伸べる余裕があるくらいには日常的な光景だった。

「鹿島大丈夫?立てる?」
「痛いよ…苗字ちゃん先輩…!」
「痛かったね…。よしよし。」

名前の優しさに触れた鹿島は泣きそうな顔をしながら彼女に甘えてくる。それが、可愛くて仕方ないという顔で名前は鹿島を見つめ甘やかす。しかし、鹿島がいくらボロボロになっていても堀は甘くない。彼は、名前の頭を掴みながら強い口調で話し出した。

「名前!鹿島を甘やかしてんじゃねぇよ!」
「ごめんって…。鹿島が可愛くって、つい甘やかしちゃった…。」
「バカだろお前…。」
「違うもん!バカって言う方がバカなんだよ!」

堀は、名前に対してまた呆れた顔をすると「お前は小学生か!勝手に言ってろ!」とデコピンをする。彼女は痛い!とおでこを押さえて床にうずくまっていたのだった…。


2016.2.11修正


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