See you again at a secrecy tea party.Don't tell him.

巻き戻しの街。そう呼称している街が何度も同じ日を繰り返しているらしい。イノセンスによる奇怪現象かもしれない、と予想を立てられたそこを調査するためにアレンとリナリーは任務に出掛けた。普通の人間では街に入ることすらできないけれど、エクソシストなら、というわけで二人は黒の教団を出立したのだ。…なぜか私も同行したわけだけど。普通の人間には入れないとわかっているのに、なぜエクソシストでない私までついて行くように言われたのだろう。案の定も何もなく、街には拒絶された。
仕方がないのでファインダーのトマさんと街の入口でお留守番だ。場所が変わっただけじゃないか、という文句を後で少年に言うとしよう。こんなところで待ちぼうけを食らうくらいなら研究でもしていたい。勿論不満なんだもの。

およそ12時を過ぎた頃。寒さに凍えている手を吐息で暖めている私の前を一人の女性が猛スピードで走って行った。「黒の教団のファインダー様ー!」と叫んでいたような気がする。巻き戻しの街から人が出てきた、ということは問題は解決したのだろうか。はっと正気を取り戻したトマ…トマトさん?ん?何か違うような…。ともかくファインダーの方が女性を追っていった。
女性の慌てよう、教団の人間を探していたということは少年とリナリーに何か起こったのだろうか。迎えに行こう、と街の入口に向けて踏み出した時、突然目の前にファンシーな扉が現れた。いかにも怪しげだけど、見覚えはある。ひとりでに開いた扉の先に、若干の躊躇いと共に踏み入った。


「ようこそメアリー!ボクのお茶会へ」


見た目だけを言うなら、同じほどの年頃の子が両手を広げ、高い声で歓迎した。「Hi,ロード、久しぶり」あははと笑ったロードはテーブルにつき、私は用意されていたもう一つの椅子に座った。甘いお菓子と紅茶が準備されている。


「私と会っていたらウサ耳伯爵に怒られるんじゃないのかい?」
「だから千年公には内緒だよぉ」


ふわふわと周りを浮いているプレゼントの箱。可愛い蝋燭。ここは夢の世界だ。
悪い子、とそんなことこれぽっちも思っていないのに窘めながらポットからカップへ、紅色のお茶を二人分注いだ。私はストレートで、ロードにはミルクを入れて。


「メアリーさぁ、どうして今アレンと一緒にいるのぉ?アレンはエクソシストなのに」
「たまたまだよ」
「嘘はよくないなぁ」
「折角久しぶりに会えたのに、真面目な話はよそう。もっと楽しい話をしないかい?」
「それもそうだね。さんせーい」


こんなところで彼女に会うなんて何かあるとは思っていたけれど、そうか少年と会ったのか。少年を殺してはいないよね、と尋ねると今回は遊びに来ただけだよぉ、と間延びした声で言われた。怪我で済んでいるのならいつか治るからいいのだろうか。

紅茶を口に含んで、そういえば突然お呼ばれされたのだからお土産を持って来ていないな、と思った。次に会う時は持ってくるとしよう。


「アレンはエクソシストなのに、それでも仲良くしたいキモチわかっちゃうなぁ。ボクもアレンのこと気に入っちゃった」
「Oh dear,ライバルが増えてしまったのかな」
「優しいアレンがいけないんだねぇ」


珍しい。人間嫌いのロードがこんなにも首ったけになるなんて。私という要因があろうがなかろうが、ノアの一族の注目の的になっていたんだろう。

ロードは気分屋だ。話題はコロコロと変わる。それに付き合えられないと友人なんてものはできない。私は彼女との話に飽きないから好きなのだけど。


「ガッコウの宿題が多くてさぁ。ガッコウは楽しいんだけど、ヤになっちゃうよ。人間ってあんなのばっかするんだねぇ」
「一般教養を身につけないといけないからね。ロードの嫌がる勉強も頑張れば、いつか役に立つ何かに変わることもあるだろうし。辛抱でしょ」
「いいよねぇ、メアリーは。元科学班だっけ?賢いんデショ?」
「それなりに」
「うわぁ。ケンソンとかしないんだぁ」
「事実だから」
「まぁね。今度手伝ってよ」
「ウサ耳伯爵がカンカンになるよ」
「秘密にするからいーの」


こうしてみると普通のお友達と会っている気分になる。見た目は人間でも、中身はAKUMA、もう一方はノア。異様な光景であることがわかる。許されない恋ならぬ許されない友情、とでも皮肉ろうか。しかもお互いこの関係を嫌がってはいないのだから、余計に憎い。

そろそろ失礼しないと少年が心配だ、と席を立ち上がった。にんまり笑ったロードは無言で扉を作ってくれた。ハートの形の扉はロードが作ったと考えればあざとさを感じないのだから不思議だ。


「ばいばーいメアリー。また一緒にお茶会しようねぇ」
「次に来るときはクッキーか何かを持参するよ」

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