水色のワンピース

「何してんだ?」
「見てわからない?空を見てるの」
「そんな格好で寝転んでっとパンツ見えるぜ」
「変態」


コンクリートの建物の屋上で空を見上げれば、少しは空に近付けるんじゃないかと思った。空に向かって手を伸ばして、雲を掴むふりをする。

雲はいいな、とあなたが呟いたことを、あなた自身は覚えているだろうか。なぜそう思うの、と問えば雲は自由だから、とあなたは答えた。私はよく覚えている。雲に憧憬を抱くあなたはとても自由に思えた。ついでにだらしなく見えた。


「そんな服、持ってたか?」
「買ったの。昨日」


ふと空を見上げて、そんな問答を思い出したから衝動買いをした。空の色をしたワンピース。忍者なのにこんな可愛らしい服、着る機会なんて殆どないに等しいのに。けれど目に留まった空色のものがこれしかなかったから。別にいいでしょ?

夏の青い空は目に眩しい。爽やかな色、と言えばいいのか。ともかく白い雲といい感じに調和している。


「ね、雲は好き?」
「あ?あー…そうだな。雲は自由だしなぁ」
「そ。私は空が好き」
「なんでだ?」
「内緒」


雲と一緒にいれるから、なんて言えないでしょ。



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