カーキ色のベスト
「あー!また落ちたー!」
甘味処の机に突っ伏して、ガンと机を叩いた。叩いたって言うより、殴った。
「なんで!?なんでキバは受かったくせに私は受かんないの!?」 「ヘッ!お前はまだまだなんだよ」 「わけわかんない!なんで私が!」
小馬鹿にする笑いをした目の前のやつをぶん殴りたくなった。
何度受けたか、中忍試験。何度落ちたか、中忍試験。目の前のキバは前回の試験で一足先に中忍に昇格した。これで同期の中でまだ下忍なのは私とサスケ…は里抜けしたから数えないとして(そもそもあいつは秀才だ)現在修業の旅に出ているナルトだけだ。
ヤバい。これは非常によろしくない。あのナルトと同じく落ちこぼれのレッテルを貰いたくない。
「下忍なんかいやだ…早く中忍になりたいよぉ…」 「いいじゃねぇか、下忍。オレの部下としてこき使ってやっからよ」 「それがいやだから早く中忍になりたいんでしょ!?」
アカデミー時代の問題児四人組の中の一人に部下として扱われるなんて、絶対に嫌だ。百歩譲ってシカマルならまだいい。あいつは頭だけはいいから。けどキバだけはダメだ!私の沽券に関わる。ぜーったいに嫌だ。
「早く私も中忍ベスト着たいなぁ…」 「同じもん着てるから別にいいじゃねぇか」 「これは似せてるだ・け!」
本物とは全然違うもんなの!と力説した。
早く中忍になりたいという気持ちが先走って、服屋で見つけた中忍ベストにそっくりなカーキ色のベストを買って、それから着ているけれど。やっぱり私は本物の中忍ベストを着たいのだ。偽物は所詮偽物に違いないのだから。
「別に焦んなくったっていいだろ?なんでンなに早く中忍になりたがるんだよ」 「そ、それは…」
早くキバと同じところに立ちたいから。なんてこと言えないし…。
「アンタにこき使われるのが御免だからよ!」
偽物の言葉は所詮偽物なのだ。
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