黒色のコート
私の世界の冬はモノクロに染まる。景色一面はまず、色を失い真っ白になる。
「さっむ」
きっと今の私の鼻っ柱は真っ赤になってるんだろう。ずず、と女を捨てて鼻を啜った。家に帰ったらまずコタツで温もろう。そのまま離れられなくなるだろうからミカンも用意して。
「そんだけ着込んどいてまだ寒いのかよ」 「冷え性なんだもん。あ、そのマフラー貸して」
嫌と言われる前にぶん盗って首に巻いた。ぬくい。サスケの取り巻きが見たらギャーギャー騒がれるんだろうな。コイツ無駄に面はいいんだもん。中身最悪のくせに。なんかイラッとしたからマフラーの先を黒いコートの中に押し込んだ。これでもっと暖を取れるはず。
私の身勝手な行動に慣れているサスケは溜め息を吐いただけで、特に何も言うことはなかった。甘えさせてくれてるんじゃなくて、ただ諦めてるだけだ。この行動も一度や二度じゃないしね。
私の世界の冬はモノクロだ。背景は白一色で、残る色はあと黒だけ。彼の顔を見て、他の女の子達はコイツのどんなところを好きになったんだろうかと考えた。やっぱり顔か。
のっそり腕を伸ばし、わしゃわしゃとサスケの髪を掻き回した。
「っ、何しやがる!」 「いや、どんな温度かなって。普通に冷たかった。手袋貸してよ」 「これ以上貸せるか」
ケチだねぇ、と言ったらサスケは無言で私の手を取った。チラリと顔を盗み見ると、少し顔が赤くなっていた。世界に白と黒と、それから赤色が少し混じった。
彼を好きになった女の子はコイツのどんなところを好きになったんだろう。やっぱりじゃなくても顔なのか?私はこういう不器用なところだけどね。
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