どうかお返事を

私は巫女。この神社に千人余りいる巫女のうちの一人に過ぎぬ、一介の巫女。

いたく辛い思いをした覚えはあるのだが、肝心のその記憶が私にはない。迷彩様が私を救ってくださった時に、あまりの惨さに防衛本能が忘却させたのだろう、と仰った。


敦賀迷彩様。私を常闇の中から救ってくださり、導いてくださった方の名だ。

彼女は私と同じ女子でありながら、私と違いとても強いお方だ。酒を好み、剣の腕は滅法強く、何より心優しい方。そんな彼の人が私の憧れの方であった。


嗚呼けれど迷彩様。どうして貴女は私を救ってくださったのに、御自身は救われなかったのです。唯一の光を喪った私に、これからどのように生きてゆけと仰るのです。

私の身を守るために貴女様は私に剣を与えてはくださりましたが、まだ心に秘める鋼の剣を頂いておりませぬ。これからどのようにして、弱き私が生きていけゆけると仰るのです。

私は一介の娘。貴女様は私のことをそれほど存じておられなかったのかもしれません。けれども私にとって貴女様は……。貴女様を喪いとうございませんでした。何故私を置いてゆかれたのです。何故。何故私に二度目の生への絶望を与えたのです。私はもう……。

何度問い掛けても、お優しい迷彩様はもう答えてくださらぬのでしょう。この冷たい土の中、貴女様は何を思われているのか。

迷彩様はこのような終わりを望んでおられたのですか。もしや私は迷彩様の重荷になっていたのですか。嗚呼答えてくださいまし。堪えられぬ、堪えられぬのでございます。

迷彩様のお身体への解毒薬は、本当に死しかなかったのでございますか。そのような悲しきこと、私は胸が押し潰されそうな思いにございます。もう一度貴女様の腕に抱き締められたい、などと贅沢は申しません。けれどもどうかお返事だけを、頂けはくださいませんでしょうか。私を思ってくださるのであればどうか、答えてください。

迷彩様が如何様な考えをお持ちであろうとも、私にとって貴女様は救世主。唯一無二の存在にございます。ですから私めは貴女様がお幸せでいらっしゃれば、それは私にとっても幸せに違いないのです。

ですから迷彩様。一介の愚者に過ぎぬ私が、貴女様のお幸せを願い、貴女様が救われればと思うことをお許しください。そしてその問いにどうか答えてください。どうか。


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