星の瞬き | ナノ

  鬼の形相


「てめェら…そこに一列に並んで正座しろ…」


ビキビキと青筋を立てて対峙するのは、正座をしたサスケ、サクラ、シカマル、我愛羅、テマリ、カンクロウ。

こんな大人数を一度に説教するのは初めてだ。


影分身からの情報によれば、シカマルは囮になり敵を惹き付け傷だらけに。
サスケとサクラは我愛羅にやられて怪我だらけ。
やった本人、我愛羅は影分身のオレと九喇嘛にやられてボロボロ。


「こんの…馬鹿共が!!

いいかよく聞け。てめェらが騒ぎを起こしてくれたせいでオレの仕事が増えんだよ…わかるかッ!オ・レ・の 仕事を増やすんじゃねぇ!!」


ボカボカと個人に対し説教をするやつを拳骨で殴る。


「うっ…!」 「いたっ…!」
「じゃん!」「ッ…」

「カンクロウ!お前じゃんってなんだよじゃんって!」

「思わず出たもんは仕方ないじゃん!」


カンクロウの変な叫びはひとまず置いておいて、一番右の手頃なサスケから説教を始める。

サスケは一番最初にナルセに目を付けられたことに身を縮める。


「サスケ…お前、サクラに怪我させるとはどういうことだァ!漢なら体張ってでも女守りやがれっ!」


びくっと体を震わせ小さくすまないと謝る。

謝るならサクラに謝れぇ!お前が責任取って嫁に貰うのか!?と続ければまたもや小さくサクラに謝る。

まあ、若干サクラが嬉しそうだからここらで終わらせてやる。


次は砂の三姉弟の上二人だ。


「お前らにぴったりのことを言った、オレが好きな漫画の主人公の台詞を引用してやる…

『兄貴ってもんはなぁ…後から生まれてくる下の兄弟を守るために先に生まれてくるんだよ!』

家族であるお前らが我愛羅を愛さずどうする!?我愛羅は化け物だと先入観を持ち、何もしなかったお前らは愚か者だ。その愚かさを悔い改めろ!」


二人は思うところがあるのか、俯き肩を震わせる。
こいつらにこれ以上の追い打ちはいらない。今回のことは良い薬になるだろう。


最後に残ったのは我愛羅だ。
肩を掴み、しっかりと目を合わせる。


「我愛羅。お前はもう自分を化け物だと言うのは止めろ。お前ではなく、守鶴が可哀想だ。お前が自分のことを化け物と呼ぶのは守鶴がいるからだろう

化け物っていう呼び方はな、人間が自分とは異なるモノを区別するために使う言葉だ。同じ生命なんて一つとしてないのにな。それは差別だ。差別のつらさはお前がよく知っているはずだ

お前は弱い。憎しみに囚われ、愛をもらわなかった故にな。

愛が欲しければオレがくれてやる。先ず、その自分の愛し方を変えろ。別の方法にしやがれ」


我愛羅は戸惑ったような、まごついたような翡翠の瞳をオレに向ける。

こいつ、犬…いや狸みたいだな。隈があるせいでどうしても狸に見えてしまう。


まったく…どいつもこいつも何も分かってないガキばかりだ。だからこそオレがこうして動かなければいけない。


「お前らのせいでオレの口調が迷子じゃねえかよ。慰謝料として全員で金出してオレにでかいホールケーキ買えよな!!」

「じゃ、なんでてばてば言ってるんだよ」

「キャラ作りを意識してるに決まってんだろォ!」


なんでシカマルはわざわざ質問に答えてやったってのに溜息を吐くんだよ。

失礼な野郎だな、ほんと。ボディーブローかましたるぞ


はぁ…嫌になるな。

これから木ノ葉と砂の信頼を再度取り戻して。
破損したこの会場の修理費も計算して。
今回のことを踏んで里の警備を厳重にするように指示して。
ここの死体の処理や怪我人の治療をして。

…やることが多すぎて嫌になる。


「まったく…これも全てお前らの親父が大蛇丸の侵攻を許してしまったせいだ。我愛羅の長い反抗期も親の不十分な教育のせいだし…。

そちらは兄さんがしっかり説教しておいてくれてるといいな」

「なっ!?お前ッ、風影に何をした!?」


おっと、一人言が聞こえてしまったようだ。

木ノ葉にとって火影は希望の炎。それと同じように一応あんなやつでも砂の希望の嵐のようだ。


「何をしたかって…知り合いに頼んで風影を保護して貰っただけだ。

今回のことで木ノ葉と砂の信頼を持ち直すのは面倒だ。だったらうちのじじいと砂の親父に全て押し付け…げふん。任せようと思ってな」


おい。なんで事細かな理由まで説明してやったというのに呆れられないといけないんだ。


「どうやらそっちも終わったようだね」

「おやカカシ先生。ご機嫌麗しゅう。三代目は?」

「…かなりの重体でね。今木ノ葉病院だ。……おそらくもう現役ではいられないだろう」

「そ、そんな!三代目様が……!」


声を上げたのはサクラ。ひどく動揺しているようだが、それは残りの人にも言えること。


三代目のじーさんは死んでいない。契約者が自分であったからだ。じーさんからもらった対価は“忍として”の魂。すなわちじーさん本人が死ぬことはない。

契約者が自分みたいなお人好しでよかったな


それよりどうして生きていることに喜ばないんだろうか?あの大蛇丸とやり合って生きているというのに。

それに、あのじーさん結構歳いってるんだから別にもう現役じゃなくてもいいだろ


ふむ。そんなこと三代目のじーさんは今病院か。
今この場にいるのは、先ほど説教をしたやつらにカカシ先生、パックンとかいう忍犬。


「ちょうどいい。先生、オレ達も病院に向かいましょう」

「?どうしたの?」


首を傾げてカカシ先生はオレに尋ねる。残りの人達も声には出さずともなぜオレがちょうどいいと言ったのか理解出来ていない様子。

オレはニヤリと笑って口を開く。


「四代目のお目覚めだ」




*****



「なぜお主がミナトのことを知っておるかはこの際問わぬ。……本当に行くのか?」


病院に到着し、じーさんと合流して最奥部へと向かう。

じーさんは包帯でぐるぐるだったが、用事を言えばついて来ると言って聞かなかった。

大人しく寝ていればいいのに、と口に出さずともじーさんは絶対行くオーラを醸し出していた。面倒なじじぃだな。


「私達もついて来てよかったのか?」

「気にしなくていい。目が覚めた時、たくさんの人に囲まれているほうが四代目も嬉しいはずだ。」


木ノ葉のルーキー達やカカシ先生、じーさんに砂の忍を携えて、段々と薄暗くなっていく廊下を進んで行く。

既に人影はない。こんな奥深くに入院する患者などいないからだ。

木ノ葉の忍達も自分達の里の病院にこんな場所があったのを初めて知ったのか、興味深そうに周りを見ている。


「…着いたぞ」


目前には大きく、そして頑丈な扉が。ネームプレートに名前はない。オレが代表して扉を開く。


中には大きなベッドに横たわり、大量のチューブと機械に繋がれた四代目、波風ミナトとその妻、うずまきクシナが。

先生はその痛ましい姿に顔を顰めていたが、オレは気にせず中に入る。

オレに続いた下忍達は初めて見る四代目の姿を物珍しそうに見ていた。


椅子を手繰り寄せ、二人の顔が見える位置に座る。


「(九喇嘛、オレの体を見ていて欲しい)」

「(わかった)」


いざという時のためにテレパシーで九喇嘛に体を任せ、オレは意識を沈める。


瞼を閉じれば暗い、深い闇が広がる。

大丈夫。やり方はわかっている。二人の魂がオレから出ていっても何の問題もないように、じーさんから忍の魂を貰ったではないか。


意識を込めて二人の顔に触れる。
右手は波風ミナト。左手はうずまきクシナ。

黒が混じったような金色が二人を包む。
その場にいた人は、その幻想的な光景に息を呑んだ。


少し経って光は二人の中に浸透するように入り込んでいく。

間をおいて、すっと二人の瞼が動いた。



「おはよう……父さん、母さん」



オレに応えるように二人はやんわりと微笑んだ。



終結、そして目覚め
(え!?父さん母さんって…)
(そういえばシカマルはまだ知らなかったっけ?)
(ちょっと、そんな簡単にばらしていいの!?)


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