姉と小南と長門
「許せ、ナルセ」
「リーダーにお前のことがばれてな…」
家を訪ねる物好き、二人に突然そんなことを言われた。
イタチは家を訪ねたとき、くつろいでいるサソリを見て驚いた表情を見せたが、すぐに慣れやがった。
サソリもサソリで最近同じ組織に入ったやつがオレの家を訪問しているのに驚いていた。が、こっちもすぐに慣れていた。
お前ら順応力高すぎだろ
人のこと言えた義理じゃないがな
で、だ。この二人の言い分をまとめるとだ。
アジトでオレの話をしていたところをリーダーに見つかり、連れて来いと指示された、と。
何勝手にフラグ立ててくれてんだよ!
しかも死亡ものか?死亡ものなのか!?
勘弁してくれよと思いつつも、友人の頼み事を無下にするほどオレも堕ちた人間じゃない。
というわけで目の前には暁のリーダーさんが。
え?早い?移動中の話なんていらないだろう
影分身を家に置いてきて、木の上をひたすら移動するだけだぜ?時間の無駄、行数の無駄だ。
「あんたもさ、ずいぶんと立派な志を持ってるようだけどさ。それを達成したとき、あんたはどこに立ってるんだ?」
ぴくり。リーダーさんと隣に立ってる小南さんが動揺したのがわかる。
「人の救済というのはな。その人を助け、なおかつ自分も生き残り共に生きていくことをいうんだよ。あんたの計画じゃあ、あんたの行きつく先は死みたいだけど、そこんとこどうなの?
大事な人が目指したものを受け継ぐというのは立派なことだ。でも今のあんたの姿は大事な人に誇れるものか?」
「…だから平和を諦めろというのか」
「違う違う。オレはやり方を考えろって言ってるんだってば。
あんたが今していることはただの武力行使だ。でもそれは目指しているものと違うだろ?あんたなら別の方法でもできるって。立派な志を持ってるんだから」
そこまで言って用意されたお茶菓子をつまむ。
あ、これうまい。チェックしとかないとな。
「あんたらも壮絶な子供時代を過ごしたんだなあ
オレも戦争は嫌いだ。上層部も嫌いだってば。上層部は細かいところを見逃してしまうからな。見逃そうとしてしているわけじゃあないから一方的に責めることもできない。困ったもんだよ」
「ずいぶん達観してるんだな」
「そんなことないってば。
あ、そういや知ってたか?あんたとオレ、同じ一族なんだせ?」
意外意外。いやー、奇怪な巡り会わせもあるもんだ。
はっはっは。二人が目を真ん丸にしている。
「つーことはあんたはオレの兄さんか?いやあ、嬉しいね。お兄さんなんて。オレってば里では嫌われ者だからさ」
「それじゃあ私はあなたのお姉さんね」
意地悪そうに小南さんがくすくすと笑う。
こんな美人なお姉さんがオレの姉だとか…。光栄すぎるわ―。
リーダー、長門兄さんが置いて行かれてるとおろおろしている。変な人だ
ああ、温かいな。温かい。
人は失くしてやっとその価値を見い出せるものなんだとどこかで聞いた。
兄弟の温もりを、思い出してぽろぽろと涙を流す。
姉さん。あんたはいつも私のことを馬鹿にした癖に、ふとした瞬間急に優しくしやがるんだ。おかげであんたのこと嫌いになれなかったよ
あんたは卑怯な人間だ。
何もしてないように見せかけて温もりをこんなにも与えてくれていたのだから。ただの思い出でさえ涙を流させるのだから。
姉さん、今日私に姉と兄ができたよ
二人はあんたのことを思い出させるのに十分な存在だ。
だから今だけ昔を惜しんで
またお姉ちゃんと呼ばせて
(いいよね、…お姉ちゃん)
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