県内の女子中高生の間で、セーラー服が有名になった。

正しくは、"私が通う高校の"だ。


派手な装飾が施されているわけでもなく、個性的な色をしているわけでもない。襟は直線的で、幅は肩幅よりも小さい。半袖、長袖共に白襟に灰色スカート。三角タイは一般的な赤色。

ちょっと前までこのセーラー服は特に目立つこともなく、どこどこの高校の制服だと特定されるほど知られてはいなかった。実際問題、ブレザーのほうが断然人気だった。


けれど、今やこの制服を着たいがためにあらゆる女子中学生がこの高校に入ることを目指し、街なかを歩けば、◯◯高校の制服だと指を差されるまで認知されるようになった。



空前のブーム。
きっかけを作ったのは、ある女子生徒だった。






「…なんか、イメージしてたのと違う」

妹が鏡の前で呟いた。妹はこの流行りに感化された一人だ。私の制服を羨ましがり、一度着させてほしいと頼み込んできた。

制服を手にとった妹は、嬉しそうにそれを身にまとった。しかしすぐに微妙な表情をした。


「椎名さんが着ていたセーラー服はもっと素敵に見えたのに」

鏡に映りこんだ自分の姿に満足できないようだった。


「てっきり、お姉ちゃんが着てるから可愛くないんだと思ってた」

「うるさいなあ。私と同じような見た目してくせに」

納得できない妹は、まだうだうだ文句を言っている。そのうえ自分が似合っていないのを私のせいにしようとする。


妹は手に持った高校のパンフレットと、鏡のなかの自分を見比べながら「なにが足りないんだろう」と唸っている。
妹の目線の先には一人の女の子の姿があった。その子が着ているセーラー服は、妹が試着している私のセーラー服とはまったく別物かというくらい美しくて魅力的だった。


そこに写っている―――
椎名ありさは、私の高校のパンフレットモデルに抜擢された女の子だ。モデルの人数は限られていて真面目そうな子や容姿が綺麗な子が選ばれる。彼女は完全に後者だった。


「これって同じ制服なの?なんかボテッとしていて全然可愛くない」

「も〜文句ばっかり。嫌なら返してよ」


「やっぱりお姉ちゃんの高校受験するのやめる」


妹はそう決心したようだ。すでに違うセーラー服の高校のパンフレットに手をのばしていた。





『このセーラー服は可愛くない』

そんなこと入学する前から知っている。



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