「殺してやる…」




スローモーションのように向かってくる刃物を呆然と眺めるしかなかった。

焼けそうなほどの熱さと痛みが全身を襲うまで


―――何が起きたのか分からなかった。







俺がこのような状況になった以前の話をしようか


26年前に特に裕福でも貧乏でもない典型的な一般家庭のもとに生まれた俺。地元の小中高に通い、大学も地元だった。
学校での立ち位置は目立つことのない普通のポジション。喧嘩や口論を嫌い、穏やかに人生を歩んでいった。


就職も可もなく不可もなくといった場所を選び、5年経った今も続いている。功績が著しく高いわけではない。一生平社員かもな、というような立場である。

今時にしては珍しく、親から縁談を持ち込まれ、否定することもせずに結婚を決めた。控えめで優しい女性。俺によく似合っていた。



恋愛はあまり得意ではなかったが、その女性と会食したり、外出しているうちに、だんだんとこの女性ともっと一緒に居たいと思うようになった。安心感があり、朗らかな気持ちになるのが心地よかった。


そうして二年前に結婚した。まだ子供は生まれていないが、俺達はゆっくりのペースでいいんだと思ったし、彼女も焦るような人間ではなかった。





波乱万丈とは程遠い世界を生きてきたと思う。



だから、

どうして、

こうなったのか分からないんだ。





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