あなたがわたしを変えたのだ



揺さぶられる度、ぬちゃぬちゃと水音が鳴る。そのほかに聞こえる音は、互いが発する獣のような息遣いのみだ。
既に痛みではない別の刺激に支配されるそこには、男の綺麗な顔からは想像出来ない程のグロテスクな熱の塊が、ぐっぐっと断続的に出し入れされていた。

「う、っあ、」

ジェノスのそれは、サイタマの良い場所を的確に狙い定めて突いてくるものだから、出したくもないみっともない声がつい出てしまう。
羞恥と快感で顔が歪み、顔を背けてしまいたくなるが、この体勢では顔を隠す事すら出来ない。見られたくないのに、ジェノスは、眉間に皺を寄せてサイタマを食い入るように見下ろしている。いつもそうだ。

「み、んなっ」

パンパンと激しく打ちつけられる快感に耐えながら、サイタマが弱弱しく首を振り、ジェノスの胸を手で突っぱねる。しかしジェノスからの返答はない。なおも性器の挿入が繰り返されるだけだ。

「やめ、っ」

サイタマは苦悶の表情を浮かべて、なおもジェノスの胸を押す。充分に慣らされたとはいえ、ジェノスのそれはサイタマの小さな穴にはやはり大きすぎて、今や穴のまわりは可哀想なほどに赤くなっている。そんな中をジェノスはそりかえったそれを、無理やりねじ込み、貫くのだ。

「うっあ、」

もうそれ以上開きようがないといのに、ジェノスは更に奥深くまで暴きたいようで、股関節をぐっと開くと、そこに体を入れて、強引に開かせる。
胸がぴたりと合わさり、ジェノスの顔が肩の辺りに埋められると、ハッハッと荒い息遣いが直に耳元でこだまする。こいつサイボーグなんじゃないのか、とぼんやりと思うが、そんな問い今更だ。この行為も初めてではないのだ。
ガツガツと抉るように深く勢いよく挿入され続け、肌のぶつかる音が大きくなっていく。
二人の歳の差は左程ないはずだが、サイタマはうんざりするほど、ジェノスの性欲の強さを実感させられている。俺も19の時はこんなんだったかなぁと、ふと考える事はあるが、ここまで無我夢中になれる恋人も居なかったので、比べようがないだろう。

「センセイセンセイセンセイ」

うわ言のように呟かれる声は色気たっぷりで、耳元で聞かされるサイタマの体も熱くならないはずがない。
ジェノスが腰を浮かす度、サイタマのそれがジェノスの腹に擦られ、ぬるぬると滑るのだ。その刺激に、サイタマのそれからは耐えきれないと言った風に先走りがこぷりと浮かんできている。
じゅぶじゅぶと繋がった場所から、耳を塞ぎたくなる程の音が鳴っていた。

「先生、カワイイ、先生、カワイイ」

何の精神攻撃だとツッコミたくなる程、ジェノスは荒い息遣いと共に囁いてきて、サイタマは耳をふさぎたくなる。ぞくぞくと背中がしびれていた。
出し入れがより一層早くなる。
ジェノスが苦しげに呻いた。限界が近いのかもしれない。それはサイタマも同じだ。

「あ、ダメだ、も、それ、む、り」

よく分からない事を口走りながら、ジェノスの肩を突っぱねるように押すと、ジェノスが体を起こす。サイタマの顔の横に手を付いて、ようやく見えた顔は、頬が赤く、ギラついた目はただ一点サイタマだけを見詰めている。欲情しきった男の顔だ。
ぽたぽたとジェノスのこめかみから汗が流れ、サイタマの顔に落ちる。サイタマははっと息を詰め、ぞくりと背筋を震わせた。
いくら何を言ってもジェノスはもう止まらないだろう。
気づかれぬようハアと一度息を吐くと、サイタマは両手を伸ばし、ジェノスの肩を掴んだ。観念、という言葉がぴったり当てはまる程のあきらめの心境だった。
一瞬びくんと震えたジェノスはサイタマを見下ろし、肩を掴まれたことがよほど嬉しかったのかいきなり口にむしゃぶりついてくる。熱くぬめった舌がサイタマの口腔内を暴れまわり、息も出来ない程激しく舌を絡められた。

「ん、っん」

苦しくて顔をそむけるが、ジェノスは更に追ってくる。そのまま無情にも出し入れが再開され、最早気持ちいのか苦しいのか、何がなんだか分からなかった。
すっと顔が離れると、ラストスパートとばかりに、サイタマの足を更に広げると、強く乱暴に揺さぶる。

「も、いっぱいだ、それい、じょう、はいん、ねえ、って」

息も絶え絶え言うが、ジェノスが聞き入れてくれるはずもない。しかも何故か中でぐんと大きくなった気がした。

「も、おま、え、っ」

文句の一つでも言ってやりたいが、先端ギリギリまで引き抜き、パンと大きく音が鳴る程に肌をぶつけて貫かれれば、脳の中がスパークしてしまって言葉が上手く出てこない。観念したとは言っても、この絶倫に付き合える程、サイタマは欲が有り余っているわけではないというのに。
ガツガツガツと、奥の奥まで硬く大きくなったそれで貫いてきて、目もくらむ程に快感が襲ってくる。その間も、ジェノスはサイタマだけを食い入るように見詰め、どの瞬間も逃すまいと瞬きすらしない。
サイタマはそれを知っているから、とても顔を上げていられなくて、下を向くが、それはそれでサイタマの性器が勃起しジェノスの腹で擦られている所をまざまざと見せつけられるので、目も開けていられない。
ぎゅうと目を閉じていると、瞼の上や鼻にキスされて、無意識に顔を振る。ジェノスはその様子に喉を鳴らし、更に顔中に唇が降らしてくる。

「あ、も、ダメだ、い、くっ、いくっ!」


サイタマの目尻に浮かんだ涙をジェノスが舌で舐めとりながら、パンパンパンと数回強く叩き付けられると、サイタマは脳が白むの感じながら、ぶるりと震えて精液を放出した。

「いくっ、くッああ…!」


達してきゅうきゅうと締まる中を無理やり分け入るように、ジェノスはねじ込んできていた。達している中を突かれ、さらには敏感になっている先端が腹に擦れて、気が狂う程感じてしまう。

「あ、やめ、も、やめろ、ダメっ」
「・・っ、可愛い、先生、カワイイ」

限界までに勃起したジェノスのそれは、サイタマの良い所を確実にとらえ、意思とは関係なくサイタマのそれも元気を取り戻してしまう。
激しく出し入れされ、力の入らない体が良いように突き上げられ、サイタマの背が逸らされる。どこか遠くへ飛んでしまうような恐怖感を覚え、無意識にぎゅっとジェノスに抱き着いた。
ジェノスが息を詰め呻く。

「また、イク、も、やめ、むりっ」
「うん、センセ、またイッて、」

切羽詰まったような声に、サイタマの胸が締め付けられていたなんて恥ずかしくて言えるはずもない。

「っも、イク」
「センセ、おれも、イク、!」

乱暴にぐっぐっと貫くと、痛いほどに肌をぶつけられた。サイタマは耐えられず、びくっびくっと痙攣し、再び絶頂に達する。
ジェノスも限界だったようで、一度深くまで挿入すると、ぐりぐりと回すように腰を押し付けてきた。

「うっ」

低い呻き声が漏れ、ジェノスも達したのだと、ぼんやり思う。ジェノスは暫く絶頂感に酔いしれるようにゆるゆると腰を使って、より深くまで精液を注ぎ込んでいった。

「センセイ」

こんな状態で話しかけられても、答えられるはずがない。ハアハアと荒く息をしながら、なんとか酸素を取り込もうとする。

「センセイ、可愛い、」

するりと頬を撫でられて、サイタマは振り払おうと顔を横に振るが、それはとても弱弱しいものだった。唾液や涙でぐしゃぐちゃな顔が可愛いはずがないだろう、と思うのだが、何度も何度も言うからジェノスには可愛く見えているのだろう、と思い込む事にしている。

「好き、先生、好きです」

切なく囁かれた声に、心動かないはずがない。

「っ恥ずかしいからほどほどにしろ!」

両手で顔を隠すが、本来なら髪で隠されている頭皮が晒されているため、醜態が丸見えであるのは分かっていた。しかし精一杯の強がりなのだ。
そんな様子を見下ろし、ジェノスは心底嬉しそうにクスクス笑いながら、覆いかぶさってくる。

「好きです、先生」

いじらしく、健気に囁かれた言葉に、サイタマはまた胸が熱くなってしまうのだった。


2013/1/13

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