毎度おなじみサラリーマンパラレル。
体の関係から始まり、何だかんだありつつハッピーエンドになります。
やっぱり溺愛攻め、流され受け。

4Pの後半〜9Pのサンプルです。

 昨夜は、会社の飲み会だった。
 入社して早数年。こういう場も今や慣れたものだった。一、二年目の時はひたすら気を使ってただ疲れただけなのを覚えている。だからだろうか、上司に酒を勧める後輩達を横目に、気が緩んで沢山呑んでしまっていた。
 今回の飲み会は参加するしないはそれぞれの自由だったが、我が社の決算が黒字で無事終了したお祝いと労いの会だったので、さすがに面倒くさがりな俺でも行きませんとは返事を出来なかった。あまり気は進まなかったが俺も曲りなりにも社会人なので、とりあえず表面上は楽しげに振る舞い、しかし内心こいつ誰だっけ?との闘いである。深酒してしまったのはそれを誤魔化すためだったのかもしれない。
しかも食事は豪勢で美味しかった。それも酒を勧めさせた要員である。
 お前今日はめずらしくよく呑むな、と同僚に言われたのだけは覚えている、というかそれが最後の記憶のような気がする。
 思い出して、いつの間にかカラッカラに渇いていた口の中を潤すために、ごくりと唾を飲み込んだ。
 目覚めた時は、酩酊して帰宅することすら出来ずに一人でラブホテルに何も考えず入って寝こけてしまったのかもしれないと思った。それなら良い、と何十回とこの思考の中で思い込もうとした。
しかし現実は、隣に誰かが寝ている事で、それが違うと否定している。正直こんな経験は初めてだった。もちろん自宅や相手の家に泊まったという経験もない。つまりお恥ずかしながら俺はアラサーながら童貞だったのだ。だから体のあちこちが痛いのも、酔っぱらってどこかにぶつけまくったのだろうとしか思えなかった。これが激しい行為の代償であると童貞の俺が想像できるはずもない。
 確信してしまったのは、ちらっと枕元に置かれたごみ箱を見た時だった。とにかく中身が異様で、俺は見なきゃいいのに、無意識に手が伸びてしまっていた。そこには、大量のカピカピに乾いたティッシに、空のコンドームの袋。しかもそれを3個も見つけてしまう。そして、ティッシュにくるまれた、これまた乾いた使用済みコンドームの残骸。ひいいいと喉がひきつる。え、俺、一晩で3回もしちゃったの?しかも深酒をした後で?ちなみに俺は酒を呑んだ日は、勃起しないことの方が多くて、しかも射精出来ないのだ。そんな俺が3回も?にわかには信じられず、ただただ絶句である。知らず知らずの内に童貞を捨ててしまっていたなんて、そんな事あるはずない、信じたくない、と逃避したかったが、俺も男の端くれである。相手が誰であれ、場合によってはその責任を取らなくてはいけないのだ。
相手は昨晩の飲み会に参加した女子社員だろうか?はたまた行きずりの女性だったりして?
 慰謝料を要求されたらどうしよう…!?と嫌な予感が脳裏を過り、相手を確かめるのが怖くて仕方なくなった。しかしいつまでもこのままではいられないだろう。
 掛け布団に隠れている相手の様子を窺うために、呼吸を止めて恐る恐るのぞき込む。すると、
「う、わ、」
 そう声が出てしまうほどに驚いた。少しだけ見えた髪が金色に近い茶色だったからだ。しかも痛みがないように見えるキラキラと輝くサラサラの髪。誰??と内心焦る。知り合いの中で全く覚えがないのである。ここまで来ると恐怖というより困惑が勝ってきてしまった。
 この俺が金髪の女性と、エッチしちゃったの??嘘だろ?
 信じられない思いを抱えつつ、震える手を抑えられないまま、掛け布団を摘み、こっそりめくってみたのたった。瞬間、時が止まったかと思った。止めていた呼吸がそのまま永遠に戻ってこないのではないと思える程である。つまり死にそうなほど驚いた。
 目の覚めるような金色の髪、鼻筋の通った綺麗な顔立ち、それはまるで人形かと錯覚してしまうが、確かに穏やかに寝息を立てていて、人間であると安心したと同時に愕然とした。隣で寝ていたのは、同じ会社に勤める、今や社内で彼の事を知らぬ人などいないというくらい有名で優秀な後輩の男、ジェノスだったからだ。
覚えがなかったのはあまりに接点がないためである。お互い他部署なので、すれ違う事も会話した事すらない。俺は奴を知っていたが、こいつは俺の顔すら見たことないだろう。
 そんな相手と何故こんな事に??冷や汗がぶわりと溢れてきた。一瞬、昨晩どこかで接点を持ち、俺があまりに酩酊したために、とりあえずラブホテルに避難したのかな?とも考えた。俺の家の住所なんて知らないだろうし、こんな俺を自分の家まで連れていく義理もないし、そもそも嫌だろう。しかし放っておくことも出来ずに、ここまで連れてきてくれたのだろうか?とも思えた。ラブホテルというのが唯一解せなかったが、助けてもらったのだから感謝しかない、同じベッドで寝ていたのは、ここにはベッドが一つしかないからだ、と思いたいところだが、先ほどのごみ箱の件が見逃せない。しかも俺たちは、何故か全裸である。どう見たって事後だ。童貞の俺だってそれくらいは理解出来る。まさか前の客のごみをそのままにしておくはずもない。
 結論、俺たちは男同士でエッチをしてしまった、という事だ。何故?とかどうやって?とか知識のない俺はただ混乱することしか出来ない。
 反射的にこのまま気付かれない内に逃げてしまおうかと考えた。きっとこんなイケメンがハゲとエッチ出来てしまうくらい、ジェノスも酔っぱらっていたのだろうから、恐らく起きたら俺と同じような思考に至るだろう。だからこのまま俺がいない方が、ああ、きっと一人で無意識に泊まったのだ、と考えてくれるに違いない!
 すぐさま行動に移すため、掛け布団をどかして、そっとベッドを降りようとした、…のだが足を床に付けて、立ち上がろうと体重をかけた瞬間、
「いっ……!!」
 今まで経験した事のない鈍痛が下半身を襲い、そのままへなへなと床に座りこんでしまった。驚きつつも再び立ち上がろうとするが、膝ががくがくして上手く立てない。しかも、顔を顰めた瞬間、どろりと尻の奥から何かが出た感触がして、俺はさーっと血の気が引いていくのが分かった。とうとう漏らしてしまったのか?この状況でもまずいのに、脱糞はまずいだろうよ!慌ててそろりと後ろを見ると脱糞の跡はなく、一瞬ホッとするが、代わりに床にはなぜか白い液体が垂れていた。
「ふぁ、」
 思わず声が出てしまう。何故俺の尻から、白い液体が出てきた?というか、これには確実に見覚えがあった。間違いなく精液だろう。
 え????精液?何で?
 パニックを起こしてしまって、まともに思考する事すら出来なくなる。
 なんで精液がここに?知らなったが、男同士でするときは尻の穴を使うのか?え、でもなんで?俺の尻の穴にちんこを突っ込んだって事か?しかも中出しされたのか?じゃあ、あのごみ箱のコンドームは一体何なんだ?
ひたすら混乱してしまい、息も絶え絶えになっていた頃、寝ていたジェノスが唐突に身じろいだので、俺はびくんと体を跳ねさせてしまう。逃げることも立ち上がる事も出来ず、床に座り込んだまま、ジェノスを茫然と凝視し続ける事しか出来ない。ゆっくり、そろりと瞼が上がっていき、まだ眠気と若干の酒が残る目が開かれた時、俺は逸らす事も出来ずにバチリと目を合わせてしまう。
 そのまどろんだ目が俺を映して、何度か瞬き、一度ぎゅっと瞑るとすぐに開く。一瞬状況が分からず困惑したような顔をしたが、何故かすぐに事態を把握したみたいな平然としたような顔をして、ジェノスはのそりと体を起こした。は?何でそんな冷静なんだよ?俺なんかさっきからあわあわしっぱなしだぞ!?茫然としたまま見上げていると、ジェノスが唐突に声を出した。
「おはようございます」
 その掠れた声が妙に色っぽくて、それなのに男らしくて、ドキっとしてしまう。
「お、おはよう」
 思わず返してしまった。するとジェノスは、見たこともないようなとろりとした無防備な笑みを浮かべた。人形のような、普段は感情がないんじゃないかってくらいの鉄仮面だったので、そのギャップが激しくて驚いてしまう。
「体、大丈夫ですか?」
 優しく、愛おしげに聞かれて、ただ茫然とするしかない。パニクっていると気づかれたくなくて平気、と答えたかったが、現状立ち上がれないのだから全く大丈夫じゃないだろう。俺が視線を泳がせながらあわあわしていると、その様子を見ていたジェノスが、ギシリ、とベッドスプリングを鳴らしてこちらにすり寄ってきた。その音に目を向ければ、ちょうど掛け布団を捲った瞬間で、見たくもない男の全裸が見えてしまって、思わず視線が泳いでしまう。
「立てないんですか?」
 気遣わしげに問われて、顔を真っ赤にさせながらもこくこくと頷いた。
 エッチした翌朝、膝が笑って立ち上がれないとかどこの生娘だよ、っていうか、まあ尻の穴的には処女だったのだから当然だが。
 ジェノスは、俺が混乱している間にも手を伸ばしてきて、そうして俺の現状に気付いたらしい。瞬間、小さくあっ、と声を上げた。今なら恥ずかしさで死ねる。これなら脱糞していた方がまだマシだと思えた。
ジェノスは、わなわなと震えたかと思ったら、
「す、すみません!昨晩、貴方の体を拭いていたら、また気持ちが盛り上がってしまって!貴方はほとんど意識が無かったのに…俺の欲望が収まらないばかりに…。本当にすみません」
 ジェノスは全裸のまま床に正座し、土下座してきた。俺は顔中を顰めたまま、茫然とするしかない。俺の尻の中にあった精液は、コンドームを3個も使っておきながらまだやり足りなくて、新しいゴムをフロントに頼む余裕もなく、生で突っ込み射精した跡だったらしい。そして、そのまま眠ってしまったという事だろう。
「すみません、ちゃんと処理しなければならなかったのに…!」
 まあ、たぶんお互い泥酔していたし、そんな余裕ないだろう。その前に体を拭こうとしてくれただけでもありがたい。
「本当に申し訳ありませんでした」
 言って、また頭を下げたから慌てて肩を掴み顔を上げさせる。
「だ、だいじょうぶ、だから」
 喉がカラカラで、上手く声を発する事が出来ない。それにジェノスも気付いたのだろう。ばっと顔を上げると、慌てたように立ち上がり冷蔵庫まで行きくとドアを開けた。迷いなく中からペットボトルの水を取り出すと、蓋までわざわざ開けて、差し出してくれた。その間も奴は全裸だから、目のやり場に困ってしまったが。俺は無言で受け取って一口、二口、と飲んだ。一度水を喉に通すと、とんでもなく水分を欲していたらしくごくごく、と半分ほど一気に飲んでしまった。唇を離して、ハアと一息つく。
「ありがとう」
一応、水の礼を言うのを忘れない。そのままおずおずと顔を上げると何故かジェノスが固唾を呑んで俺を凝視していたので驚いたが、手元のペットボトルに気付いて、差し出した。
「あ、ありがとうございます!」
ジェノスは慌てたように半分水の残ったペットボトルを受け取り、煽るようにして全て飲み込むと、同じように一息吐いた。先ほどの凝視は俺も水が欲しいよっていうアピールだったのか。
「…」
「…」
 気まずい。居たたまれない。酔いに任せて恋人でもない相手とエッチしてしまったなんて…。俺はこの空気に耐えられず、ベッドの端に手を付くと、恐る恐る立ち上がろうとする。
「どこに行かれるんですか?」
 ジェノスが慌てたように聞いてくる。
「シャワー浴びてくる、あと、中のも、…」
 綺麗にしてくる、ともごもごしながらも続けた。
「それなら俺がします!」

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