飽きずに生徒×高校教師のパラレルです。
今回は全年齢の本。
やっぱり溺愛攻めちょっと強気なジェノスとツンデレ?受けのサイタマです。途中喧嘩?みたいなのはありますが結局はラブラブなお話。
5Pから〜9Pまでの文章になります。
 



「もうお前に分からない問題なんてないだろう。この前も小テスト満点だったし」
 ふう、とため息を吐きジェノスのほうを向くと、ジェノスはホッとしたようににっこりと笑った。
「やっと、見てくれましたね」
「…今俺は日誌を書いてる途中だったの。だから手を離せ」
「嫌です」
「…じゃあいいよ。別の仕事やるから」
 俺は明日の授業の準備をするために棚に入っていた資料に手を伸ばした。すると、ジェノスがいきなり机を叩いたのだ。それはあまり強い力ではなかったが、わずかにバンと音が鳴る。何事かと驚いて見上げると、ジェノスは静かに怒っていた。普段教室や廊下で見かける時はあんなにも無表情なのに、何故俺の前だけこんなにも色々な表情を見せるのだろう。色々な感情をあらわにしてくるのだろう。
「じぇ、」
「先生!」
 そう語気を荒げながら、ジェノスがぐいと乱暴なてつきで俺の肩を掴み上げてくる。
「な、何だよ」
 びくびくとしつつも見上げていると、片方の腕を掴まれぐいっと引っ張り上げられた。椅子に座っていた俺はその勢いでジェノスの胸の中に顔を突っ込むハメになってしまう。鼻をぶつけて痛いとだけは感じだが、他の事はあまりに突然の事でどう処理していいか分からず、ただ硬直し呆然としていると、ジェノスは俺の背に手を回して、抱きしめてきたのである。
「先生、何でいつも廊下ですれ違う時目を合わせてくれないんですか?教室でもそうですよね?寂しいです」
「…お前はただの生徒だろう」
「嫌です、先生」
 わざとなのか、無意識なのかは分からないが、耳元でぼそぼそと囁くから、妙にくすぐったくて仕方がない。俺は体を竦ませながらも、顔を背けて距離を取った。
「おい、とにかく離せよ」
 どんと強く突き飛ばす事も出来ず、というか強い力で抱きしめられてるものだから、そもそも引き剥がす事は出来そうもない。
「嫌です。離したくありません」
 そう言いながら駄々を捏ねるように顔を首元に埋めてしまうから、俺は困り果ててしまう。ジェノスはとても聡明で、もう既に大人としての考えを持っているし、クラスメイトなどを少し高い位置から見下ろしていると思っていた。実際そうでもあるのだが、実はわがままで甘えん坊なのかもしれない。こんなところ、自分にしか見せてないのかな?と思うと嬉しさで胸がざわつく。
 しかし、今こうして抱きついているジェノスをどうにかせねばならない。顔を覗き込もうとするが、くっついているか表情は窺えない。
 俺は少し考えて、溜息を吐いた後、さらりと流れる金の髪の毛をさらりと撫でてやった。何の意図もない。ただ、駄々をこねる子供をあやすように。すると、白く冷たい印象のジェノスの肌が少しだけ赤く染まったような気がした。ああ、撫でられたのが嬉しかったのか?恥ずかしかったのか?
 そこでようやく気付く。この状況が非常にまずいだろうという事に。あれだけ予防線も張り、距離を置こうと決意したのに、それをこいつはいとも簡単に越えてきちまった。
 俺は教師でジェノスは生徒だ。なんで生徒に抱きしめられなきゃならん。
「先生」
 俯いたジェノスがくぐもった声で俺の名を呼ぶ。それがあまりに甘い声だったから、思考回路がめちゃくちゃになりそうになる。
「先生の心臓の音、すごいですよ…?」
 声色が酷く嬉しそうだ。都合よくジェノスのペースに乗せられているようですげえ悔しい。
「先生も緊張してるんですか?」
 ジェノスが、ちらりと顔を上げる。至近距離で覗き込まれ、その表情は愉快そうに笑っていた。完全に振り回されている事に気づき、少しばかりもやもやとした気持ちになった。俺の方は、ジェノスのあからさまな好意に対し、幾度となく神経をすり減らしてきたというのに。何でこいつはこうも、ちゅうちょなく踏み込んでくるのだ。腹が立ってきて、生徒であるという事も忘れ、ジェノスの肩を掴みぐいと押しのけた。
「…もうこれ以上はダメだ」
 素直にジェノスは離れたものの、その顔には未だ悪戯な表情が浮かんでいて、思わず視線が泳いでしまう。俺の真意など、聡明なお前にはお見通しなのかもしれない。
「せんせい?」
 俺が居たたまれずに背を向けると、ジェノスが一歩踏み出してきて俺の肩にそっと手を置く。後ろから顔が近付いてきたな、と思った瞬間、咄嗟に目を閉じてしまった。別に甘んじてキスを受けたかったわけじゃない。ただ、目を瞑る前、ジェノスがそっと睫毛を下ろしていたから、あ、キスするんだ、と思い、条件反射的に目を閉じてしまったのだ。しかし、ドキドキしながら待っていても、一向に唇に何かが触れる気配は全く無い。しかし、眼前の気配は消えないのだ。怖くなり、恐る恐る目を開けると、そこにあったのはやはりジェノスの顔で、数センチ先で綺麗な顔をして笑っていた。ぼふっと、一気に顔が赤くなるのが分かる。俺のキス待ち顔とか、吐き気するくらい気持ち悪いに決まってるのに、この約数秒間確実にこのイケメンに晒してしまった事になる。
 うわあああ、しにてー。俺が恥ずかしさと居た堪れなさで死にたくなっていると、ジェノスがぐいと、耳元へと口元を寄せてきてそして、囁くような声で呟いた。
「先生を好きにしていい、権利、俺にくれませんか?」
 何が好きにしていい権利だ。臭すぎるだろう、と思ったが、それは恥ずかしさからくる足掻きみたいなものなので、そっと心の中に仕舞っておくことにした。
「お前、どうなるか分かってんのか?」
 今一度覚悟のほどを確認しておくことにする。好きにしていい権利とは言ったが、それが俺の想像通りだったとしたら、イケナイ道に足を突っ込むという事なのである。
 俺が問うと、ジェノスは真剣な表情でこくんと頷いた。
「どうなっても構いません」
「俺の方がダメージ大きいんだがな。あらゆる意味で」
 立場的にもそうだし、この話の流れだと俺が所謂女側の方なのだろう。だったら心情的にも身体的にもだ。
「あらゆる面で、俺が全てカバーします」
 ガキのお前に出来んのかよ、と言いたい所だが、本当に出来そうだから、突っ込むのは止めておこう。
「っていうか、まず確かめておきたい事がある」
「はい」
「ジェノスって俺の事好きなの?」
「はい」
 何の迷いもない返答だった。というか食い気味の勢いだった。
「それを先に言え」
「すみません」
 これも食い気味である。
「体目当てなのかと思うだろ」
 本来なら俺の体なんてタダであげるって言ったって欲しくはないと思うが。
「体も欲しいです」
 そう言いながら熱の籠ったような瞳で見つめられ、ぞく、と背筋がぞわりと粟立った。
「体だけか?」
「まさか」
 苦笑するように肩を竦めた。そのまま再び俺の耳元に口元を寄せて、囁く。
「身も心も、欲しいです」
 欲情したようなジェノスの声に腰が砕けそうになる。まさかこんな、男の部分を堂々と晒してくるなんて。真面目で、普段なら性的な事なんて微塵も感じさせないような、ある意味人形のようなジェノスが、こんなにも、欲望をあらわにするとは。驚きとともに俺自身も興奮している事に気付いた。心臓の高鳴りが抑えきられない。
 ジェノスは俺の耳に触れるだけのキスをすると、震える声で矢継ぎ早に囁いてくる。
「先生の事が好きです、大好きです、大好き過ぎて、たまらないんです」
 まさか、ここまでジェノスの感情が高ぶる事があるとは思いもしなかった。そりゃあ、男だし、そう言う事もあるだろうとは思うが、普段見せている顔とあまりに違い過ぎる。俺の決壊が壊れるのが先か、ジェノスが一歩踏み出してくるのが先か、と考えていたが、同時だったようだ。もう俺の予防線はとうに切れちまっている。
「…先生、返事を聞かせてくれませんか?ねえ、サイタマ先生?」
 そこで名前を呼ぶのは卑怯だろう。もう、倒れてしまいそうだった。俺は視線を泳がせた後、ごにょごにょと呟いた。
「大ダメージ負っても良いかなって気分」
 言うと羞恥で消えたくなったが、ジェノスが隠そうとする俺の顔をわざと覗き込んでくるから、頭をぶん殴りたくなる。それでも顔を上げられないでいると、俯いた俺の額にキスをしてきたので、チラリと顔を上げると、うっとりとした様子で俺を見ていた。
 もう俺は何をやってるんだろう。もしかしなくてもこれはイケナイ道に、っていうか底なし沼に自ら足を突っ込んでしまったんじゃないか。男同士、という事だけではなく、倫理的にも。こいつ未成年だし。
 やっぱ今の無し、と言いたい所だが、ジェノスがひどく嬉しそうな顔をしているし、これ以上無いくらい頬を真っ赤にさせているから、今更無かったことになんて出来そうもない。
「先生…、先生、先生」
 俺の葛藤には全く気付かず、たまらないといった風にジェノスが触れるだけのキスをしてくる。
「っ!!!!」
 これは、マジで、本当に面倒くさいことになってしまった。しかも引き返せない。抜け出せない。ああ、これから俺の教師生活、どうすればいいんだ…
「先生、口開けて?」
 首を傾げて窺うような表情で言ってくるこいつはあざとさ100%である。そしてほいほい引っかかっちまう俺である。
 俺は言われた通り口を開き、ジェノスがぐちゃぐちゃ口の中を掻きまわしてくるのを諦めの境地で受け入れていると、着ていたシャツのボタンがいつの間にか全部外されている事に気づき、あまりの早業に驚愕する。さすがに止めさせたがな。ここが準備室で、校内だったからだ。誰が来るか分からない。
 お預けを食らったジェノスは大層落ち込んでいたが、俺の家ならいいぞ、とぶっきらぼうに言ってやると、一瞬でキラキラした瞳で俺を見てきて、お前は犬かとツッコみたくなる程だった。まあ、俺も我慢出来そうに無かったからな。



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