サンプルになります!R18
先生がひたすらもだもだして、最終的にラブラブエッチになる話です。(本編沿い)
いつもの如くジェノスが溺愛攻めしてます。本文はR18になっています!

序盤になります〜



 俺は今、正体不明のサイボーグと暮らしている。
 狭いワンルームの家に男と同居なんて普通ならまっぴらごめんだが、不思議とジェノスとの生活は苦痛を伴わない。まあ、あれだけの部屋代を貰っているのだから、文句を言えた義理ではないが、ジェノスが家事全般をやってくれる上に、俺の邪魔をしないようにしてくれているから、特にやる事の無い日は、家事をジェノスに任せて、ただぼうっと漫画やらテレビを見て過ごさせてもらっている。一人暮らしをしていた時より快適に過ごせているんじゃないかってくらいだった。
 先ほどヒーロー教会からパラシュートで恒例の配達があったので、本日はジェノスと一緒に開封していた。しかし今日は手紙だけではない。一冊の雑誌が入っていたのである。その雑誌は女性向きのファッション誌で、表紙にでかでかと、『イケメンヒーロー大特集!』なるものが書かれていたので、一瞬眉を顰めたが、興味本位でぺらぺらと捲ってみた。隣りでその様子を眺めていたジェノスは、なんですかこれ、と冷たく吐き捨て、不愉快そうな顔で俺の手から雑誌を取り上げようとしたが、せっかくなので見てみようぜと捨てるのを止めさせた。
 ジェノスはメディアへの露出を一切拒否するとして有名だが、この雑誌の表紙には、『鬼サイボーグの秘密のアレコレを教えちゃいます!』なんて書かれていて、一瞬驚いてしまうが、ジェノスの弁解によると端的に言えば教会に騙されたようだ。一般人による人気投票の週間ランキングでも上位を常に維持し、イケメンヒーロー五本指に入る(笑)そうなので、教会もジェノスを表に出したくて必死なのだろう。確かに届くファンレターの数はとてつもなく多い。いつも段ボールに山程入って届く。
 ヒーロー活動は寄付金によって賄われているので、露出が増え気に入ってくれる人が居れば居る程、寄付金が増える仕組みである。純粋にヒーロー活動に賛同して寄付してくれる人も多いが(主に男性)女性はどうせ応援するならイケメンの方がいいに決まっているのだ。ジェノスをメディアに出せばもっと寄付金が集まるだろうという魂胆なのである。
 ある日S級ヒーローの会議だと偽って教会まで召集させ、椅子に座ると何故かヒーロー以外の人間がおり、やけにアレコレ聞かれたそうだ。それに答えていると、その間に何故か写真を撮られていたのだ。数十分後、ようやく騙された事に気付いたジェノスは、そこらにあった物を全て燃やして帰ってきたそうである。しかしこうして雑誌にちゃんと掲載されたという事は写真と取材メモは命がけで守ったみたいだな。
 そんな嫌な思い出もあり、俺が雑誌を読む事をジェノスは好ましいと思っていないようだ。暫く文句を言いたげにちらちらと俺を窺っていたが面倒なので無視していると、手持無沙汰になったのかトイレの掃除をしに行ってしまった。ふう、これでゆっくりと見られるぜ。
 内容は、『今をときめくイケメンヒーローたちにインタビュー』というもので、好きな食べ物や趣味から始まり、彼女の有無、好きな女性のタイプなど、読者が興味を持ちそうなプライベートについてだった。もっとヒーロー活動に関係のある話を聞けよ、と思わずツッこんでしまう。これではまるでアイドルのようである。
 呆れつつも捲っていくと、ジェノスの他に数名のヒーローが誌面を飾っていた。
 それにしてもジェノスはむかつく程人気あるよな。誌面でも一番目を飾っているし。ファンクラブまであるようだ。ふん、腹立つぜ、などと若干嫉妬しつつも、読んでいく。まあ、俺も弟子(?)の人気が出るのは素直に嬉しいものだ。
「まだ読んでらっしゃるんですか?」
 暇だからついつい読むのに夢中になっていると、トイレ掃除を終えたらしいジェノスがふて腐れたような顔で俺の横に腰かけてくる。
「面白くないでしょう?」
「…あ、うん、正直読む意味はないな」
 だってせっかく女性達が聞きたがりそうな話題ばかりなのに、ジェノスの答えは決まって『その質問の意図は何だ』『お前らに言う必要はない』なのである。これではまるでインタビューになってない。つうかこの取材した人もバカ正直に返答をそのまま書く必要あったのか?このインタビューページ丸々カットでいいじゃねえか。しかも締めに、『このミステリアスさが彼の魅力ですね』とあり、俺は雑誌を引き裂きそうになった。
「そうですよね。本当くだらない」
 ジェノスが肩を竦めて疲れたように息を吐く。俺はジェノスの写真が載っているページを出して見せながら、そこを指で示した。
「まあ、お前の顔がありゃ内容なんて関係ないんだろ」
「馬鹿馬鹿しいにも程がありますね」 
 そう言いながら、ジェノスは汚いものを見るみたいな冷たい目で雑誌を見下ろしていた。そんなジェノスをちらりと見やる。
「…」
 俺は、雑誌を見てちょっと気になってしまった事があった。しかし聞いていいものか、ちょっと躊躇われる。どうしたものか、と困っているとジェノスに目ざとく気付かれ、不思議そうな顔で首を傾げられた。何でもないなんて言える雰囲気でもないので、仕方なしにおずおずと口を開いた。
「…でもさ、ちゃんとした回答を聞きたかったんじゃねえの、読んでる女の子達は」
「そうでしょうか?」
 ジェノスは心底不思議そうな顔で雑誌にチラリと視線を送る。
「特に好みの女性のタイプとか、彼女の有無とかさ」
 まぁ、逆に答えない方がジェノスのイメージに合うし、曖昧にしておいた方が、私にも望みあるかもと気を持たせる事も出来るもんな。ジェノスにそんな意図は全くないようだが。
 先程のちょっと気になってしまった事、というのは実際のところ、ジェノスの経験度はいかがなものなのだろうかという何とも下世話な話である。なんと言ってもジェノスはイケメンヒーローの五本指(笑)に入るし、まあ俺もイケメンだなとは思っている。知的そうだし、何より憧れの対象(俺はよく分からないが)のS級ヒーローなのだ。十分に活躍しているらしいので女の子たちの憧れの的と言っても過言ではないはずだ。
 この顔から察するにきっと昔から異性には大人気だったんだろうし、15歳まで普通に暮らしていたそうだから、女性と交際した経験もあって当然なのかもしれない。しかしそう思うと、なんとなく微妙な心持ちになった。まあ、単なる妬みと、うまく言えないが寂しくなったというか、…説明のつかない気持ちになった。
「でさ、実際どうなわけ?」
 自分でも判断の付かない複雑な心境に困惑しながらも、冗談めかして質問する。
「え、何がですか?」
「だから、女性関係だよ」 
 ジェノスは俺の問いに難しい顔で眉を顰め、それから首を振る。
「全く興味ありませんが」
 という答えが返ってきたので、俺は一瞬目を丸くさせてしまう。
「え、そ、そうなの?マジ?」
 信じられなくて再度聞いてしまう。
「ええ、以前話しましたが俺は四年前、」
「あ、その話はカットでお願いします」
「…ですから、そんなものに現を抜かしている場合ではなかったのです。それに元々興味が薄いようです」
「…え、じゃあキスとかは…?一回も無いのか?」
「ええ」
「………」
 意外な答えに、俺は驚いたままジェノスの顔をしげしげと眺めてしまう。この顔で、19歳なのに、そんな自信満々に未経験と言えちまうジェノスがマジですげえ。俺だったら恥ずかしくて嘘を吐いちゃうかもしれない。
 確かに今のジェノスの性格や、普段他人と接する時の冷たい態度からも、コミュニケーション能力が決して高くない事は分かっていた。でもまさか一度も女性と交際した事がなかったとは思ってもみない。
 ジェノスに全くその気がなくても女性の方から寄ってきそうなものだが、…いや、寄ってきても今までは全て拒否してきたという事か。
「…先生はそう言った経験あるんですか?」
「え、」
 俺が考えに耽っていると、ジェノスが眉を顰めてやや不機嫌そうに聞いてくる。…こいつも一人前に妬んだりするんだな。俺は嬉しくなって、ジェノスの肩をぽんと叩いてやる。
「大丈夫だって!お前はまだ若い。その気になればいくらだって経験出来るさ!」
 優しく笑いかけてやると、ジェノスが複雑そうに顔を歪める。からかい過ぎたかと思い、取り敢えずフォローの言葉を追加する事にした。
「ま、まあでも、アレだよ、経験がありゃあ良いってもんでもないしな。希望を持とうぜ!時代はこれからだ。躊躇わずに女の子とばんばん付き合っちゃおうぜ!」
 当たり障りのない言葉でジェノスを励ましてみた。こいつもまだまだ思春期なんだな。童貞をからかわれただけで怒るなんてさ。俺が訳知り顔でうんうん頷いていると、ジェノスは未だ難しい顔しながらも、何故か呆れた風に溜息を吐く。
「ハア…。でも、基本的にそういう事全般が面倒なんですよね」
「え、なんで?」
 そのイケメンフェイスと今の地位を使わないなんて宝の持ち腐れだろう。
「そりゃさ、女の子は面倒くさい生き物だけど、それがいいんじゃないか?やっぱり恋人がいた方が、毎日楽しいだろうし」
「…」
「お前のコミュ力の無さはもう分かったけど、俺とはこうして普通(?)に接する事が出来てるわけだし」
 言うとジェノスは何事か言いたげにチラリと俺を見上げて、しかしすぐに俯いて口を噤んでしまう。一体何だってんだ?
「…そうですね」
「うん!俺は、まあ、結構楽しませてもらってるよ、お前との生活」
 主に家事全般において、楽させてもらっているぜ。俺の言葉を聞き、ジェノスはパアと顔を明るくさせた。
「はい!俺も楽しいです。先生と過ごす時間はとても有意義で、」
「お世辞はやめい」
 言うと、ちょっと困ったように俺を見詰めてくる。
「だから、お前は他人と常に一緒に居たり、付き合ったりするのは出来るって事なんだよ」
「…」
「あとは共通の趣味とかがあれば最高だな」
「…」
「慣れないから最初は戸惑うかもしれねぇけど、でも絶対楽しいって!それにお前だって女の子に触りたいと思う事はあるだろ?」
 先ほどからジェノスが俺の事を鋭い目でじっと見詰めてくるものだから、黙ったら気まずいと思いつらつらと言葉を繋げてしまう。しゃべり終え、微妙な微笑みでジェノスの様子を窺っているとぽつりと呟く。
「…他人に触りたい、ですか……」
 俺は慌ててこくこくと頷いた。
「う、うん、そうそう」
 ジェノスは無表情のまま俺を凝視している。
「……どうでしょうか…」
「お前も男なんだから、そういう欲求があったって普通なんだぜ」
 ジェノスは生真面目な所があるし、この歳まで経験が無かったからこそ深く考えすぎているのだと思い、ここは年長者として上手くフォローをせねばと考えていた。
「お前だってこう、女の子にむらむらすることあるだろ?」
 少々言いにくいが、男同士なんだからこういう話をしたって別に変じゃないよな。なのに少々どぎまぎしてしまう。ジェノスからの痛い程の視線ビームを受けて、何となく話し辛いのだ。つうか何でジェノスは俺の事凝視してるんだろう。
俺の問いにジェノスがさらりと答える。
「ないですね」
「え、ねえの!?」
「ええ、…女性には、ないです」
 何やら含みのある言い方をされてハテナマークが浮かんでしまう。つか、むらむらしたことないってどういうこった!?俺は前のめりになりながらも慌てて問う。
「ひ、一人でやってたりはするんだろ?」
ジェノスは眉根に皺を寄せながら首を捻る。
「だ、だから、…オナニーだよ!」
 自分で言っていて、気恥ずかしくなる。
「それは、まあ」
 その答えにホッと一安心してしまう。不能ではないんだな。ああ、良かった。ジェノスもやっぱり男だった。気を取り直してジェノスに質問する。
「だったら、女の子とエッチしたいとも思うだろ?」
「………」
 うわあまた黙っちゃったよ!俺が安心出来たのはほんの一瞬である。
「…オナニーはするけど、エッチはしたくないってか?お前今時の絶食系男子なのか?」
「違いますよ」
 ジェノスが少々怒ったような顔で首を振るものだから俺は首を傾げてしまう。
「何が違うんだ?」
「気になる人はいますよ」
「え、」
「その人とはそういう関係になりたいと思っています」
「!」

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