00:星に誓いを。


 涙が、止まらない。あふれる涙を拭っても拭っても、止まらない。目の前には、ノレイン・シーフォと刻まれたフレンのお母さんのお墓。この下に、おばさんが眠っている。お父さんがいなくなって、お母さんもいなくなって、おじさんもいなくなって、おばさんもいなくなってしまった。
みんないなくなってしまう。
きっと自分のせいで、みんないなくなってしまったんだ。また一人ぼっちになってしまうなら、私から一人ぼっちになった方がいいかもしれない。そうすれば、誰もいなくならない。私が、いなくなればいい。そう思うのに、やっぱり一人は怖い。でも、みんながいなくなる方がもっと怖い。どうすれば、みんないなくならずに済むのだろう。
どうすれば、みんな失わずに済むのだろう。

「大丈夫だよ」

 ふいに、繋がれていた右手に力が込められた。顔を上げれば、さっきまで隣で一緒に泣いていたはずのフレンの目から涙なんて零れていなくて。

「僕がいるから」

口から放たれたのは、欲しくてたまらなかった言葉で。答えられずに嗚咽を零していると、今度はぎゅっと抱きしめられた。

「僕が、ライを守るから。ずっと傍にいるから」

お母さんがしてくれたように、おばさんがしてくれたように、フレンの手が私の頭を撫でる。悲しくて、苦しくて、辛いのはお母さんを亡くしたフレンの方なのに。
 お母さんがいなくなるのは、すごくすごく悲しいこと。会いたくても会えない。沢山話したいことも、やりたいこともあっても出来ない。私が、もう二度とお母さんと会えないように。

「フレンをお願いね」

 いつだったか、そう言ってくれたおばさんの声が聞こえた気がした。おばさんは、こうなるって分かってたんだろうか。だから一緒にいていいって、そう言おうとしてくれたんだろうか。優しい声や笑みを思い出したら胸が苦しくなって、また涙があふれた。ありがとうって伝えたいのに、嗚咽ばかりが零れてうまく喋れない。言葉にならないかわりにフレンの背中にそっと手を回して頷く。触れた指からフレンが僅かに震えているのが分かって、フレンが私にしてくれたように頭を優しくなでる。フレンのお母さんのようにはなれないけれど、それでも傍にいれば少しでも力になれるだろうか。ひとりぼっちにならずに済むんだろうか。ぎゅっと抱きしめて、抱きしめられれば段々と涙が止まってきて。
 フレン越しに見上げた空では、星と月が輝いていた――――




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