海が見てた



「海だー!」

「おっ、穴場じゃん。人いねーし」

「もう18時だしね。運転ありがとう」

「おう」

「足だけ入ってきちゃおっ」

「おい、走って転ぶなよ」

「冷たい!気持ちいい!」

「あんま奥いくなよ。着替え持ってきてねーんだから」

「シリウスも!ほら、サンダル脱いで!」

「ったく…引っ張んなよ」

「シリウスっ」

「?、っ?!つめてぇ!」

「あはは!今の驚き方傑作!」

「八重てめぇ!」


*


「ふぃー足だけでも楽しかった〜」

「なぁ俺の服びちょびちょなんだけど」

「避けないからじゃん」

「不意打ちで水かけられて避けられるやついねーよ」

「私は濡れてないよ?」

「手加減してやったんだ。風邪引いたら可哀想だし」

「やっさしーい。あ、いい感じの木の棒発見」

「なにすんの?」

「…『Sirius love』、上出来!」

「…」

「シリウス?あ、ちょっと!なんで消すの!」

「、取ってこい!」

「ああ!私の木の棒!投げるなんてひどい!」

「……『八重 love』いやいや…乙女かよ。爪の間に砂入ったし」


*


「夕日綺麗だね」

「そうだな」

「目をつぶっても明るさが分かるよ」

「本当だ」

「波の音と海の匂いが心地いいね」

「俺は八重の匂いがいい」

「急に甘えてくるね」

「人いねーしいいだろ」

「でも恥ずかしい」

「誰も見てねぇ」

「夕日が明る」

「すぐに落ちる、」

「ん…っ」

「可愛い」

「…見てるよ」

「ん?」

「海が、見てる」

「見せつけてやればいいじゃん」

「もう…」


夕日に照らされた2つの黒い影は
海に見守られながら重なった。





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