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最初は見てるだけで良かった。遠くから笑顔の彼を見てるだけで満足だった。食事中、授業中、休み時間、たまに罰則中。彼がいつも一緒にいる友達なんて目に入らないくらい彼ばかり見ていた。

「シリウス!こっちだ!」
「ああ今行く」

だけど私の感情は我儘で、それだけでは満足出来なくなっていた。彼はいつも女の子を連れていた。

「冗談じゃねーよ本当だ」
「やだもうシリウスったら〜」

私もあの子みたいに彼と話したい。あの子みたいに笑いあいたい。羨ましくも妬ましかったその感情を押し殺して生活していたけれど、以外にもその時はあっさりと来た。そう、神は私にチャンスをくれたのだ。

「ねぇっ、これ落としたわ」
「ん?あぁ、わりぃ。サンキュー」

シリウスが落とした羊皮紙を私が拾って渡した。ただそれだけの日常的な行為なのに、初めての彼との会話に心が満たされた。とても心地がよかった。もっと、もっと彼と話したい。そんな欲求が出てくる。でも、話しなっていいよね。だって、知り合いだもん。

「はぁい、シリウス。いい天気ね」
「よう。久々に太陽見たな」

私って欲張りかもしれない。話すだけじゃ物足りなくなってしまった。見ているだけでよかったのに、今では彼に触れたくて、触れられたくて仕方がない。そう思うのは我儘かな



「きゃっ。あ、ごめんなさ…ってシリウス」
「わりぃ…あ、お前か。ちゃんと前みて歩けよ」

食事を終えた大広間からの帰り、人に押されたフリをしてわざとぶつかってみた。彼の背中は大きくて暖かくてコロンのいい香りがした。それだけで幸せだった。

「うふふふ。もうシリウスってば冗談ばっか」
「冗談じゃねー本当だ」

彼と腕を組むのも何度目か分からなくなってきた。こっちを見ている4年生の女の子には、私のことがあの時羨ましかったあの子のように見えてるのかもしれない。でも、あの子と同じは嫌。これだけじゃ、足りない。欲張りが私を支配していくようだ。

「シリウス、キスしてって言ったらしてくれるの?」
「…目ぇ閉じろ」
「…んっ」

ついに、してしまった。彼の柔らかな唇が直に触れている。長く濃い睫毛が私の肌をくすぐる。はぁ、満たされる。少し強引なところも素敵。彼の舌が私の口の中を荒らしていく。

「っはぁ、ねえ。もっと、もっとちょうだい」
「………」
「んっ、…はぁ」

私の舌をつついて絡めとる。歯列をなぞられて下唇に音をたててキスをして彼の唇が離れる。私か彼のか分からない透明な糸が一生切れなければいいのにと本気で思った。



我儘で欲張りな私はもう止まらない。貴方を全てで感じていたい。こんな私はおかしいだろうか。恥を捨て、自ら彼をベッドに誘う。彼は嫌がることなく私を受け入れた。

「あっ、あっ!…んぅ」
「……はっ」

彼が私の胸を貪るように舐めて、陰部を優しく触る。長くしなやかな指が私の体に触れているというだけで下半身が疼く。だけどどうしてだろうか、彼はキスをしてくれない。

「あんっ、ねぇシリウス、もっと!」
「…ん、」
「ああぁっ!シリウス!そこ、気持ちいい!はぁんっ」

音をたてて陰部を一生懸命舐める彼は、私の脚の間にいる。そこから見えるその頭がすごく愛おしかった。私に興奮している彼の下半身に私も高ぶった。お互いの汗が混じり合い、ついに私は彼と繋がった。

「あぁ、シリウス、すごくいい。気持ちい、いあぁ!あっ、あ、んっ!」
「、ん、はぁっ、」

彼のモノが私の中で暴れる。彼と私はひとつになってる。幸せだ、これ以上ない幸せが今ここにある。けど、なぜだか満たされない。貴方が名前を呼んでくれないから。



「とっても良かったわ。最高の気分」
「あぁ、良かったな」
「また、しましょうね」
「ああ。じゃあな」

閉められたドア、部屋にひとりの私。彼はとても優しかった。彼も良かったと言っていたし、もしかしたら私は我儘じゃないのかもしれない。でも、名前を呼んで欲しいっていうのは我儘?欲張り?

「ああ、違うわ。彼は名前を呼んでくれないんじゃなくて、名前を知らないの」

だって私、名乗ってない。私は彼を一方的に知っていて、彼は私を知らない。あの時からずっとそう。私は彼を名前で呼ぶけれど、彼にとって私はホグワーツの1人/1000人でしかないのだから。

「ねぇ〜、シリウス!今日はあたしと遊んで!」
「仕方ねーな。いつものとこにいろよ」

あの子も私と同じ、名前を呼んでもらえない子なのかな。彼に名前を呼んでもらえる子はいるのかな。自分からは名乗らず、彼から聞かれる子、羨ましいな。羨ましいな。妬ましい。

「はぁい、シリウス」
「よう」
「今晩どうかしら」
「ん。じゃあいつもんとこで」

今日も私は彼とひとつになる。ただの1人/1000人だけど、この瞬間だけ、彼は私のことを思って、私だけを見てる。1人/1人になれる瞬間。名前なんてどうでもいいじゃない。彼は今私を見てるんだから。あぁ、幸せ。





シリウスにハマる
一人の女の子のお話しでした。





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