黎明


魔女として生きてきた20年、後悔はないかと問われれば、あると答えるだろう。しかしながらこの世に未練があるかと問われれば、ないと答える。生きとし生けるものであれば必ずしも終わりを迎える。あたし達は常に終わりを横目に見ながら生活していた。魔法界はそれほどまでにくすんだ世界だった。でも終わりを迎えるのは怖くない、怖いのは未知であるその後のこと。

第二次魔法大戦に参加していたあたしは、敵の魔法使いから逃げてる最中に死の呪文が当たって20年の人生に幕を閉じた。死を自覚したあたしは、いつ天使が迎えにくるのかと思いながら目を閉じた。そして意識が浮上し目を開けた今、想像していた天国とは程遠い真っ暗闇の中で激しい揺れに襲われている。暗黒の時代と言われているイギリス魔法界で生まれ育ったあたしでも、この揺れは経験したことがない。未知である死後の恐怖が襲い掛かる。ここが死後の世界なのであれば、この状況をどうするべきなのだろう。大して出来のよくない頭を悩ませていると、次第に揺れはおさまった。ホッとしたのもつかの間、頭上を鋭い音と共に風が切り、暗かった周りに色がついた。急に明るくなった視界に目を細め、明順応してくると何かが近付いてくるのが分かった。


「……ぱっつぁん。何、何かいた。何かいたよね」
「いましたね。何かいました」
「万事屋、人間だ!」
「人間かヨ。あれ、でもこんなにちっさい人間っているアルか?人間って竹から産まれてくるアルか?桃から産まれるんじゃないの?」
「神楽ちゃん、それ桃太郎だから。普通の人間は桃からも竹からも産まれないから」


それは白、赤、黒、色んな髪色の巨人で、あたしを見つめて何か話していた。英語ではないその言語、何語だろうか全く内容が分からない。どうにかこの状況を理解しようと頭をフル回転させるも分からない。パニックになりそうな中、白い頭が近付いてくると、あたしは捕まえられ手のひらに乗せられた。一思いに握られれば一瞬で圧迫死するであろうこの状況。巨人族は敵だ。死んでまで痛いのは嫌だ。思考回路がショートしたあたしは気を失い目の前が暗くなった。




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