花の風



「っっはぁ…八重!」

『おっ、やっほー総悟』

「テメ、やっほーじゃねェ。どんだけ心配したと思ってやがる」

『うへぁ、ごめんね』

「まぁいい、生きてたんなら」

『いやまさか車に轢かれるとは思ってなかったわー』

「あんな大事故で骨折で済むたァつくづく運のいい女でィ」

『まぁね。あたし昔から運いいからさ!』

「……俺が待ち合わせ場所をあそこにしなければ事故になんて合わなかったのにな」

『ちょっとなにしょげてんの?それを言うならあたしが待ち合わせ時間の2時間前にあそこにいなければ、だよ』

「…なんで2時間も前にいた?」

『だって久しぶりのデートじゃん?張り切ってたら予想以上に早く支度終わったから、遅刻するよりは早く行ってた方がいいなと思って』

「俺八重のそういうところ嫌いじゃねェや」

『やだ、負傷すると優しくなるタイプ?いっぱい甘えちゃおっ』

「茶化すな。まぁ今日ぐらいは甘やかしてやりまさァ」

『えっほんと!?じゃあぎゅってして』

「そんなんでいいのかよ」

『うん。あー総悟の匂い』

「走って来たから汗臭ェぞ」

『全然臭くないよ。てかあたしの為に流してくれた総悟の汗なら大歓迎』

「変態」

『へへへ』

「褒めてねェ」

『そう言えばさ、今日のデートどこに行く予定だったの?』

「今日が桜満開だって花野アナが言ってやしてね。花見にでも行くかなと」

『うわーやってもうた!行きたかったなー総悟とお花見』

「また来年に行けばいい」

『、んふふふ』

「なに笑ってんでィ」

『や、来年も一緒にいてくれるんだなーって思って!』

「何言ってんだアンポンタン。一生離す気すらねェってんだ」

『ひゃー!唐突なプロポーズ!あたしも一生総悟についていきます!なんちって!』

「まぁそう言うことだ。桜はまた咲くし、来年の楽しみにし残しておきやしょう」

『うん!……あ、…桜の花弁だ』

「あぁ、どこからか風で飛んできたんだな」

『そう言えばこの病院の中庭に桜の木があるって誰か言ってたかも』

「じゃあそこの桜が窓から入ってきたんだ」

『ねぇ総悟知ってる?散った桜の花弁を地面に着く前にキャッチ出来たら幸せになれるんだって』

「へぇ。じゃあさっき地面に着く前にキャッチ出来たから幸せになれるんじゃねェの」

『そだねー。今でさえこんなに幸せなのにこれ以上の幸せとか想像出来ないよ!』

「……期待してなせェ。俺がもっと幸せにしてやらァ」

『今日本当に優しいね。キャンペーン中なの?』

「そんなとこ」

『じゃあキャンペーン中の総悟さん、キスしてください!』

「キスはキャンペーン対象外だが、仕方ねぇ……」

『えっ……あ、』

「…………んだこれ」

『桜の、花弁が』

「あり得るか?キスする瞬間に唇の間に入ってくるとか」

『あはははは!すごーい!普通にキャッチするよりも確率低くない?奇跡だよこれ』

「……もう一回しておくか」

『えっ!』

「2人だけの時間は、桜にも邪魔されたくねェだろ」

『…うん。あたしも、そう思う』





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