08



大広間で新入生を盛大に歓迎するのは、悪戯仕掛人の1年間で一番最初の大きなイベントだ。今年も天井に大きな花火を打ち上げ、紙吹雪やおもちゃ、悪戯道具が出るクラッカーを鳴らす。ひゅんひゅん音をたてながら飛び回る薔薇の蕾は、不特定の新入生の前で止まる。それを新入生が手にすると、蕾は開花し花束へと変わった。

「うわぁ!」
「すごーい!」

新入生のみならず、在校生からも歓楽した声があがる。マクゴナガルは毎年呆れた顔をするもののこの時は怒らず、ダンブルドアは手を叩いてこの瞬間を楽しんでいた。

「スズキもタナカも、日本人らしき名前の新入生はいなかったね」
「やっぱ日本人はみんなマホウトコロに行くのかもな」

組分けの儀式も終わり、目の前のテーブルに盛りだくさんの料理が並んだ。ジェームズとシリウスがパスタを口に運びながら話していると、リーマスが口を開いた。

「僕マホウトコロの5年生と文通してるよ」

その言葉にシリウスとジェームズは思わず持っていたフォークを落とした。騒がしい大広間では誰も気にしなかったが、落ちたフォークはピーターが急いで拾った。

「なんだそれ、どういうことだよ」
「国際交流の輪を広げるとかで、監督生の中から何人かがペンパルプログラムに選ばれたんだ。マーガレットはダームストラング、アルビレッタはボーバトン、アンドリューはワガドゥー、そして僕がマホウトコロ」
「じゃあ!マホウトコロがどこにあるか分かる?」
「さぁ?僕もそこまでは知らない。世界に11あると言われる魔法学校の場所は厳密に秘密に守られてるし」
「俺ら人を探してるんだ。協力してほしい」
「悪戯するとかじゃなければするよ」

リーマスは爽やかに笑って見せた。強力な協力者が近くにいた、とシリウスとジェームズは小さくガッツポーズをした。リーマスとピーターは何のことだろうかと首を傾げた。
夕食後の歌を歌い終わると、監督生が新入生を寮まで案内する。シリウスとジェームズは人が少なくなるまで大広間に残り、上座に座るダンブルドアの所へ行った。

「ダンブルドア!あ…、校長先生」
「なんだね、ジェームズ。新しい悪戯でも思い付いたかの」

ダンブルドアは楽しそうな笑顔を向ける。

「日本の、マホウトコロの人と僕たちも文通できますか?」

マクゴナガルが隣で目を光らせてるため言葉に気を付けながら質問をしたジェームズ。ダンブルドアは折れ曲がった鼻を撫でながら少し考えるそぶりを見せながら答えた。

「残念じゃが、それは出来ん。日本はちぃと特殊でな、情報が漏れることを極端に嫌う秘密主義じゃ。今回のペンパルプログラムに選ばれたマホウトコロ生はいくつもの試験と訓練を受け合格した一人だと聞いておる」

シリウスとジェームズは顔を見合わせた。

「魔法史に日本のことが書かれていないのは、情報が他国に伝わってないからですか?」
「さよう。日本は分からないことが多過ぎて書くことがない。ただ一つ、ワシが知っておるのは」

ダンブルドアは鼻を触るのをやめ椅子から立ち上がるとウインクをした。

「魔法以外の力を使うことが出来るらしい。あくまで"らしい"じゃから本当かどうかはわからないがの」
「それってどんな」
「ほれ、もう時間じゃ。寮へ帰りなさい」

ダンブルドアが杖を振ると、ジェームズとシリウスは床を滑るように大広間の外まで移動した。結局分かったことは秘密主義ということだけだった。ジェームズとシリウスが談話室に戻ると、いつもは賑わっている広い談話室も今日は荷物の整理などもあってか人が少なかった。シリウスは暖炉前のソファに足を伸ばして寝転がり、ジェームズはそのソファを背もたれに床に座った。

「なんだよ力って。意味わかんねーよ」
「でも秘密主義ってのは当てはまるよね。彼女、魔女だってことも秘密にしてるわけだし」
「リリーのことはどうなる。アイツは八重と一緒に噴水から出てきたろ」
「リリーは……うーん。特別?」

暫く頭を悩ませた二人だが答えは出なかった。荷物の整理が終わったのか、談話室に人が増えてきた。二人は部屋に戻るため男子寮の階段を上った。すれ違い様に二年生に握手を求められたジェームズは快く手を差し出した。自分たちの名前が書いてある部屋の扉を開けると、ピーターはもう寝ているのかベッドのカーテンは閉まり、リーマスは椅子に座り本を読んでいた。

「それなんて本?」
「世界の偉人」
「日本人でてる?」
「出てるよ」

シリウスは思わずリーマスの読んでいた本を奪った。リーマスに睨まれたがそれどころじゃなかった。これにマホウトコロのことや、ダンブルドアが言っていた力のことが書いてあるかもしれないと思ったシリウスは、必死にページを捲り目玉を素早く動かした。

「この本はマグルのものだよ。だからこれに書いてあるのはマグルの世界のこと。君たちが探してたのは魔法界のことでしょ?残念だけどこの本にマホウトコロのこともそれ以外のことも書いてないよ」

リーマスはシリウスから本を奪い返し、自分のベッド横の机の上に置いた。何かが分かるかも、と期待していたシリウスは項垂れた。カチャリと扉が開き、湯気と共にシャワーを浴びていたジェームズが出てきた。交替でシリウスもシャワーを浴びたが、部屋に戻るとすでに全員寝ていて部屋は真っ暗だった。シリウスは、出てくるまで電気くらい付けてくれててもいいのに、と思いながらベッドに入った。





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