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本日晴天也。日本中のどこにいても青い空が拝めるとお天気お姉さんが言っていたその言葉は、忍の里も例に漏れていなかった。"一般人"の目につかない隠れた場所にある忍の里には多くの忍者が住み、子どもたちは里で一番大きな建物である忍術学園で忍術を学ぶ。──グラウンドで体術の訓練をしていた泉八重は、木陰で寝ていたネコがニャーと鳴くなり教師と友人に断りを入れ、風を纏わせ姿を消した。構造が毎回変わる忍術学園校内を迷うことなく駆ける八重は、最上部にある部屋の前に立つと扉をノックした。自動的に開いた扉の向こうで、畳の上でお茶をすする初老の男性が八重を見て微笑んだ。

「お館様ぁ、魔法大臣がいらっしゃったみたいなんですが」
「あれ、約束の時間より8分早い。大臣はせっかちだね」
「お館様がのんびりしてるだけでは?」
「でも末広がりで縁起いいね。呼んでくれる?」

よいしょ、と立ち上がった初老の男性─お館様は忍術学園の長であり里の長、魔法大臣は日本魔法界のトップだ。かねてより親交の深い忍の里と魔法界は仲が良く、交流イベントが多々ある。毎月一回お互いの領分へ行き来しているお館様と魔法大臣だが、忍の里へ魔法大臣が来るのは今月に入って二回目だった。八重は素早く指を動かしいくつもの印を組んだ。

「幻術・白羽船の術」

八重の手の中に現れた一枚の白い羽根。その羽根は手から浮かび上がると窓をすり抜け外へ飛んで行った。

「大臣はどのくらいでくるかな」
「2分くらいですかね」
「もうすぐ夏休みだね。どこかに行くの?」
「イギリスの友人のところへ行きますよ」
「へぇ、イギリスにも魔法学校があるみたいだよ」
「行ったことありますよ」
「えぇズルいなぁ。どんなところだった?」

他愛もない話をしていれば二分後はすぐにやってきた。先刻八重の手から飛んで行った白い羽根は船のように形を変え、先の折れ曲がった三角帽子を被った魔法大臣を乗せて戻ってきた。黒いマントを翻しながら窓を開けて入ってきた魔法大臣は、帽子を脱いで二人に一礼した。

「里へ入る前の幻術はいつ見ても素晴らしい!あの羽根がなければいつまでたってもここへは来られないだろうね」
「それは君に呪力がないからだよ。逆に私には魔力がないから、あの島は無人島だと思って近付こうとも思わない。すごい魔法だよ」
「となりの芝生は青い、か。八重今回もありがとう」
「いえ、私の役目なんで」

ニッコリ笑った八重は、大臣とお館様が座ったのを見届け部屋を出ると授業に戻っていった。





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