日が沈みきる前の夕暮れ時、冷たい川に足先を入れ、ぶるると震える体に鞭打ちながら全身を浸からせた八重はそこで汗や血や汚れを落とした。水に濡れた長い髪は背中に張り付き、それを見ていた銀時と坂本は鼻血を流した。見られていることに気付いた八重は川底にある石を足で拾い上げ、振り向くと同時に二人に投げつけた。見事頭に当たった石は、鈍い音を立て彼らの頭から血を流した。音に気付き振り向いた桂と高杉は、頭と鼻から血を流す二人と胸を腕で隠す八重を交互に見て状況を察した。 「見られないように見張っててって言ったのにアンタ達が見てたんじゃ意味ないでしょーが!」 「そこにおなごの裸体があれば見るのが男っちゅーもんじゃ!なぁ金時?」 「や、俺は向こう岸から覗きしてるやつがいないか見てただけだし。八重のおっぱいとか背中とか見てないから」 「ちょ、ズルいぜよ!先に振り向いたのはおまんの方じゃき!」 「やめんか二人とも。八重なんかの貧相な体どうでもいいだろう」 「ふざけんなよヅラてめー!どこが貧相だもういっぺん言ってみろやこら!」 裸であることを忘れて桂と言い合う八重に、高杉は呆れたようにため息を吐いた。それに気付いた銀時が高杉にダル絡みし、そこでも言い合いが始まった。二組の言い合いに挟まれた坂本がそれぞれの仲立ちをするも、ヒートアップした銀時と高杉に投げられ、川の近くにいた桂に当たり二人して川に落っこちた。突然の事に驚いたのか、底に足が着くにも関わらず助けてと溺れる二人に銀時と高杉が手を伸ばすと、待ってましたと言わんばかりに二人も川に引き込んだ。 「お前らまじでふざけんなよ!見張りしてろって!なんでてめーらと水浴びしにゃならんのさ!」 「もうこうなったら全員で水浴びするぜよ!服も洗えて一石二鳥じゃ!」 「全員で水浴びっておかしいからね!私女だし、ってか私だけ裸なのおかしくない?!」 「安心しろ、誰もお前の裸なんぞで興奮せん」 「銀時と坂本さっき鼻血出してましたけどねー。晋助くん全然こっち見てくれませんけどねー」 「貧相な体を見たくないということだ」 「…ねぇなんで今日のヅラこんなに当たり強いの?なんかしたっけ?」 「貴様…覚えてないとは言わせんぞ!俺が楽しみにしていた冷え冷えの歩狩汗を飲んだだろ!」 「やべぇバレてた!!!」 八重と桂が追い駆けっこを始めたが、水の中なのでその動きは遅い。坂本も面白がって桂と一緒に八重を追い駆け、八重は逃げるのに夢中になり胸を隠すのを忘れていた。我関せずといった態度を取りながらも、何気なく八重を見た高杉は赤い顔を隠すように一人隅で水浴びをし、銀時は面白くなさそうな表情で八重に近付いた。 「うおっ!銀時っ」 「よし良くやった銀時!八重を捕まえててくれ」 「あははは!あははは!ワシらの勝ちじゃ!」 「勝ちってなに!?てかこれなんの勝負?!あー銀時待って!」 「いい加減にしとけよてめーら。こちとら貧相なもん見せられてイライラしてんだ」 「はぁ?おめーも鼻血出してただろーがぶっ殺すぞ」 「だぁーから、お前じゃなくて向こう岸を見てたっつっただろ」 八重の腕を掴んだ銀時は、こっちに引き渡せと言う桂も、手を離せと言う八重も無視して腕を引き自身の胸に八重を抱き寄せた。悲鳴を上げた八重と、近付きながら声を荒らげる桂と坂本を見て事を把握した高杉も急いで銀時の元へ向かうがやはり水の中、遅かった。銀時はニヤリと笑い八重の耳元で囁いた。 「いつもサラシ巻いてて分かんなかったけど、胸、でかくなった?」 「……銀時もちん○でかくなった」 「そりゃ裸の好きな女抱いてりゃ誰でもでかくなるっつーの」 「事故なんですがね」 「…続きは後でな」 「銀時ィイ!離せやてめー!」 「いいのかなぁ?離したら大好きな八重のおっぱい見えちゃうけど、どうするムッツリ高杉くん。さっきから八重の胸チラッチラ見てんの知ってんだよ」 「…………」 「止まるな晋助!助けて!食われる!」 「八重!こっちだ!」 「ヅラぁ!」 高杉に気を取られ目の前まで来ていた桂と坂本に気付かず、八重は伸ばされた桂の手を取り桂の腕の中に飛び込んだ。桂は坂本にタオルと服を取りに行かせ、八重を抱き付かせたまま川を上がった。タイミング良く坂本が戻ってきたので八重の腰より下は誰にも見られることがなかった。そのあときちんと水浴びをした四人は八重から痛いゲンコツをもらうこととなった。 ≪ | ≫ Top |