小説 | ナノ







スクアーロの意識が戻ってから1週間でヴァリアーの屋敷に戻ることになった。
外傷も大してなく、ダメージはとっくに回復していたが若年での妊娠ということで検査のため時間がかかってしまっていた。
退院後に話すようにと言われ未だ、ヴァリアーのメンバーには処罰のことも妊娠のことも伝わってはいない。


(何から話せばいいんだぁ…)


数日振りに立つ屋敷の扉はただでさえ重厚な造りではあるが、異常なほど重たそうに感じて立ち止まる。いつもならこんな扉、何の気にもせず蹴破ることさえあるのに。


(俺、弱気になってんのかぁ・・・?)


玄関の扉を前にして、色々なことを抱えてらしくない程に緊張していると、ギィっと音を立てて向こうから扉が開いた。


「やっぱりスクアーロだ!」


「ベル…」


冠の乗ったキラキラ輝く金色の小さな頭が揺れる。
長い前髪で覆われた目は見えないが、口端をにんまりと上げてキョロキョロとあたりを見回した。


「おかえりぃ!!王子ずっと待ってたんだよ。」

「ねえ、どうしたの?入らないの?」

「ボスは一緒じゃないの?…ねぇねぇ」

歩み寄ってきたベルの小さな手がスクアーロの服の裾を掴んだ。

「…ぁ……」


「ちょっと、ベルちゃん!スクちゃん退院したばっかなんだから座らせてあげましょ」


ベルの騒ぎ声を聞いたルッスが出てきて、軽々とベルを肩に担ぎあげる。


「おかえりなさい、スクちゃん。具合はどうかしら?いつまでもこんなとこにいないで、早くお入りなさい」



「コラ!降ろせよオカマ」



ジタバタと足を振り回して暴れるベルをものともせず、スクアーロの足元に置かれた荷物の入った紙袋をさり気無く持つとルッスは屋敷の奥へと進んで行った。



ぽつりと玄関先に取り残されたスクアーロは、室内に落ちた足下の自分の影を見つめた。


(大丈夫…)




「ちょっとスクちゃーん?まだそんなとこにいたの?」


「お…おぉ。」



屋敷へ一歩足を踏み入れるとさっきまで重たそうに見えた扉はあっさりと閉まり、足取りも心なしか軽くルッスの入っていった談話室へと向かった。


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