小説 | ナノ




12


温かい感触が瞼に落ちた。
「ん…」

ぼんやりとした意識の中、目を開けると紅い目がこちらを見下ろしている。
ソファに腰かけ、スクアーロの頭を太ももに乗せたザンザスは窓からの柔らかい日差しを受けて心なしか表情が柔らかい気がする。

「…ザンザス」

掠れた声で名を呼ぶと、もう一度瞼に軽くキスが落ちてきた。

「なんだぁ?…やけに優しいじゃねぇかぁ?」
そう言って微笑むと、ザンザスは眉間にシワを寄せて少しムッとした顔になった。
「まるで俺が優しくないみたいだな」


優しいの意味を教えてやりたいと思いつつも、耳が少し赤くなっていたので照れ隠しなんだと気付いた。



「もしかして、俺が女だとわかって扱い辛いのかぁ?」



男だったら、こんなややこしい関係にならなかったかもしれない。しかしザンザスは、知らずに惹かれていたのだから何も問題ない。と否定した。

(惹かれていた…?)

銀色の睫毛がパチパチとまばたきに揺れる。


「な…なぁっ、ザンザス。お前、俺のこと好きなのかぁ?!」

「…テメェはどうなんだ」

ザンザスの大きな手が頭に触れ、キラキラと光る銀髪を撫でながらじっとスクアーロを見つめた。




「好きだぜぇ。愛してる!…つーか、最初に言ったよな?〈惚れた〉って。」


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