小説 | ナノ




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ディーノは彼が苦手だった。




初めて紹介されたその日、同盟ファミリーの跡継ぎの彼は未だ幼い年頃の顔立ちながらも漆黒の髪からのぞく威圧的な紅い瞳でディーノを一瞬だけ見ると、挨拶もせずに立ち去ってしまった。
キャッバローネでは周りが大人ばかりだったので一番幼い彼は皆のアイドルであり、人懐こいディーノは今まで人に避けられたことなどなかったので唖然として彼を見送ってしまったのだった。


そうして幾年か経ちディーノは彼と同じマフィア関係者の学校に通うことになった。2歳年上のボンゴレの御曹司は学校中から恐れられ、勿論ディーノもあの日から彼と打ち解けることなく今までを過ごしてきたので遠巻きにしか見ることはなかった。



「う゛ぉぉい、てめぇアイツの同盟ファミリーの坊なんだってなぁ?」


ある日突然話しかけてきたのは、悪名高いS・スクアーロだった。ディーノの前の席にドカッと音を立てて座ると、彼の方を向いて話始める。初めて間近に見る眩い銀髪に鋭い眼光は正に刃物のように攻撃的で、ディーノは息も出来ない程に体を強ばらせた。


「…聞いてんのかぁ?」

「…はっ…はいぃっ…!」


凄まれて出た言葉はなんとも間抜けで、ディーノはここから一刻も早く逃げ出してしまいたかった。


「んだぁ?…別にお前に何かしようとか思ってねぇよ。つーかテメェこの間助けてやっただろぉがぁ!」

「えっ、…あっ…うんっ、そ、そうだったね…ありがとうっ!」

「まぁ、偶然だけどなぁ。」


寮でディーノに絡んでいた不良をあっさり切り捨てるなんて過激なことをしたスクアーロに恐怖を感じずにはいられようか。引きつった笑顔をはりつけたままディーノは逃げることも叶わず内心泣きそうになった。



「俺、あの御曹司に近付きてぇんだぁ。屋敷に行ったら追い出されてよぉ」


「そ、そうなんだ…」


「週末パーティーあるんだろぉ?俺を連れていけぇ」



そうだった、とディーノは気の重いパーティーを思い出した。ボンゴレの9代目や幹部の大人達は好きだ。しかし、9代目の息子・ザンザスもこの日は出席する。同じ年頃の人間は多い方が接触が少なく済むかもしれない。


「なぁ?連れてけぇ。」


「…うーん……、わかった。」

「やりぃっ!」


「そのかわりちゃんとした格好で来てね…」


「おぅっ」






案外と話しやすいスクアーロに驚きつつも、ディーノは御曹司に近付きたい理由もわからないスクアーロを容易く連れて行くと言ってしまった自身を呪った。



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