1 静かな、どことなく不気味さもある森に囲まれた立派なヴァリアーの古い屋敷には女王様がいる。 屋敷の女主人は、かなりの我儘で気に入らないことがあるとすぐに癇癪を起こしてしまうのだ。 ザンザスの執務室の方から、パリンとガラスの割れる音が鳴り響いた。 「うぐっ・・・」 「カス鮫を呼べって言ってんだ。」 今日も女王様は部下に容赦が無い。大男のレヴィでさえ簡単に蹴り飛ばして床に平伏させる。 「ボ・・・ボス・・・、しかし奴は任務で出ていて・・・」 ふん、と鼻を鳴らしザンザスはその豊かな胸の下で腕を組んだ。 (そんなことは知ってる) ザンザスは暗殺部隊ヴァリアーのボスなのだから、もちろん部下・しかも幹部の仕事くらい把握している。 しかし、そこを無理難題我儘を尽くすのが彼女である。 「命令が聞けねぇのか?」 先の尖った、よくそんなに踏ん張れるものだと感心してしまうようなピンヒールのブーツで床に転がったままのレヴィの腹を蹴った。 「てめぇ、いつまでも床に這い蹲ってねぇでさっさとカス鮫に・・・」 「おいおいボスさん、その辺にしといてやれよぉ?」 間延びした声がして、レヴィを再び蹴り上げようとした脚がピタリと止まる。 「カス・・・」 「わりぃ、遅くなっちまった。・・・つーかあんま部下に当たんなよぉ??」 ヘラヘラと笑いながら、長い銀髪を揺らしてスクアーロがザンザスに近寄って行く。 パシンッ ザンザスは乾いた音を響かせて自身の前まで来たスクアーロの頬を平手打ちした。 「っつ・・・・」 「遅っせえよ、カス!!!!ドカス・・・・!!!!!」 「はいはい、ごめんなぁ」 叩いた時に爪が当たったのか、スクアーロの頬からは薄く血が滲んでいたが全く気にしない様子でザンザスを抱きかかえると、未だ床に横たわる同僚を跨いで部屋を出て行った。 [mokuji] [しおりを挟む] TOP |