1 「いいかい?絶対に僕たちが部屋を出てから目隠しを取るんだよ、ボス!」 そういって、フワフワと宙を漂う赤子は扉の向こうへと消えた。 ザンザスの目の前のソファにには見慣れた鬱陶しいくらいに長い銀髪の部下が、目元を覆われて心なしか縮こまり座っていた。 1時間ほど前か、突如かかってきたベルフェゴールからの緊急のコールを聞いた時には何事かと思ったが外観に異常は無い。 否、まだどういう状況なのかは判っていないのだから安心はできない。その隠された目元に問題があるのかもしれないのだ。 (チッ・・・あいつ等詳しいことを報告して行け) 『先輩が、事故にあった』 今聞いている内容はそれだけだ。 今日は朝からスクアーロ・ベルフェゴール・マーモンの3人でボンゴレ本部に出向いていたが、そこで何かがあったという。 (仕方ねえ、放っておくわけにもいかねぇんだろうし) さっさと現状を把握して仕事を進めないことには、今日のディナーが遅くなる。 ため息をつくと、ザンザスがスクアーロに近付き目隠しを解こうとに布を結んである後頭部に手を回すと、その気配にスクアーロはビクリと体を硬直させた。 (・・・そういえば、コイツ帰って来てから何も喋ってねぇ) 口煩くいつもベラベラと喋っているスクアーロが大人しいなんて、余程悪い状態なのか、と一瞬手を止めたが結び目の緩んだ布はその自重でゆっくりと滑り落ちた。 「・・・スクアーロ?」 長いまつげに縁取られたきつ目の三白眼をパチパチと瞬かせ、灰青の瞳がザンザスを見つめた。 (なんだ、何とも・・・) ザンザスのお気に入りのその美しい顔にはキズ一つなく、マーモンやベルフェゴールがうろたえていた意味がわからない。ひょっとしてボンゴレもグルになってからかわれているのだろうか。 そう思うと腹立たしいが、本当に異常が無いのか本人に確認しないことには責める先も判らないので未だ呆然としている目の前の女に話しかける。 「おい、スクアーロ・・・一体何が」 「誰?」 「!?」 [mokuji] [しおりを挟む] TOP |