小説 | ナノ




11


あの日から数日ザンザスに合わない日が続き、今日は久しぶりに店に来る予定だそうだ。
ルッスーリアからそう聞かされて、嬉しいような会いたく無いような複雑な気持ちになった。

(今会ったら絶対、セコンドさんとダブって見ちゃうし膝枕以降ずっと会ってねぇもん…)



スクアーロは湯気立つカップの中のコーヒーをかき混ぜ、プラスチックの小さなマドラーを口にくわえて両肘をテーブルについた。
なんとなく店に早く着いてしまい、特にすることもなく色々と考えてしまう。



「スクアーロ、ダラダラしてないで掃除したり客に営業メール打ったりしろ!怠け者!」


今日はベルが同伴で遅れてくるからか、やたらレヴィの威勢が良い。ルッスーリアも今は事務所へ行っているので部屋には2人きりだ。



「あいにく、俺固定の客ほとんどいねぇんだぁ。見た目が珍しいから一見さんばっかなんじゃねぇ?」


「そんなこと、積極的に客に連絡先聞くなり気に入られるように努力すればいいだろう!」



ふんっと鼻息も荒く眉尻を上げた。


(ごもっとも。)


「ご心配どうも。じゃあ、俺からも一つ。…胸パッドズレてんぞ」


スクアーロが不自然に段差のできた胸元を指差しそう言うと、レヴィは厳つい肩を揺らして真っ赤な顔で部屋を出て行った。

(…アイツ真面目なヤツだよなぁ……)


ちょっと言い方が悪かったかな、と反省しているとドアが少しだけ開いた。


「怠け者!嫌ならさっさと辞めてしまえ!!ザンザス様の前から消えろ!」


ドアの隙間から顔だけ出したレヴィはそれだけ言うとニヤリと笑い、またドアを閉めた。



(ハッ…イイ性格してやがんなぁ)




コーヒーはすっかり冷めてしまった。





(客にメールかぁ…基本中の基本だけど)



スクアーロは携帯を握りしめ、それを見つめると溜め息をついた。


「アラ、ついに来店催促メールでもするのかしらっ?槍が降るわね!」


「ひぎゃっ!!?」

ふぅっと背後から耳元に息を吹きかけられ、思わず不細工な悲鳴を上げた。


「ルッス…いつの間に…」


「ぼーっとしてるからよん。なぁに、この間のオーナー似のダンディな彼呼ぶの??アタシも紹介してほし〜い♪」


ルッスーリアがクネクネと身をよじり大袈裟に自身の両腕を抱く。


「ちがっ……、そもそも連絡先聞きそびれた」



「は?……おバカっ!」



その瞬間の表情に、ルッスの本性を垣間見た気がした。





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