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‖はじめてのおつかい 2


続き


屋敷から牛乳が置いてあるお店までは、一直線で子供の足でも歩いて10分というところ。
そして何より、この屋敷はイタリア屈指の巨大マフィア・ボンゴレファミリーの敷地内にある暗殺組織VARIAの館だ。
それを知っているものは元より近辺を彷徨くなんて不用意なことはしないし、いつ組織の者に出くわすかもしれない場所にいる人物は不審者ぐらいであろう。
屋敷の近辺にはボンゴレ傘下の様々な店が軒を連ね、遠出をせずとも生活必需品が手に入るひとつの街として機能していた。
勿論、セキュリティも高く部外者の監視・管理はしっかり成されている。街で働く者達も何かあった場合は自分たちで対処可能なほどに訓練された者達だ。そうでなければ気まぐれに狩りを始めるVARIAの狂人王子様に戯れに狩られてしまうだろう。

その高いセキュリティを誇る小さな街に突如として緊張が走った。

数分前にVARIAの屋敷から入った連絡によると、VARIAのボス・憤怒の王ザンザスの愛娘・ヴェネッサが一人でお使いにやってくるのだという。ザンザスによく似た風貌であることは周知されているが、彼ら街の者にはヴェネッサの詳しい面立ちを知る機会など無かった。うっかり失礼でも働いてしまえば街ごと消し去られても不思議はないだろう。これは由々しき事態である。

しかし彼らの心配とは裏腹に、屋敷の方からやってくる小さな影が見えていた。

目的の品は牛乳だと聞いている。
つまり、他の店は必要がないので間違えてはいってしまわないよう急いで閉めてしまおう、と慌ただしくなった。






「くれぐれも、ヴェネッサに手出しをするんじゃねぇぞぉ」


このお使いを考えたのは妻であるスクアーロだった。ザンザス自身で買い物に行くことなどほとんどなかった為、子供だけで買い物に行くという日本のテレビ番組に影響された妻を訝しげに見ていると彼女が突然娘にもやらせてみようと言いだしたのだ。

「いいかぁ、これは社会勉強だぁ。シルヴィアは幼い内から賢い子だったし孤児院に住まわせていたからしっかりしてて、どうもヴェネッサは周りに甘やかされすぎててこのままじゃ一人で何もできないダメな大人になってしまうかもしれねぇ。」

「だからといって3歳の子供を一人で買い物にいかせるのか?」

「みんなそれくらいの歳でも立派におつかいくらいできてるぜぇ?」


言い出したら聞かない妻の押しの強さに負けて・・・というか正直めんどうになって、ザンザスはヴェネッサのお使いを許可した。


しかしやっぱり一人で出歩かせるには一般家庭ではないこの館周辺は本当に危険だ。
店はすぐ見えるような場所であっても完全な屋敷の敷地内では無いのだ。
後ろを着いていく、と言いたいが言うと負けなような気さえする。
悶々と考えるザンザスをみて、スクアーロが笑みをこぼした。


「おつかいに関して一切手を出さなければ着いていって良いぞぉ。テレビでもカメラや監視してる奴らがついて行ってたしなぁ。」


そうしてザンザスは小さな愛娘の初めてのお使いを尾行をすることにした。

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