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‖はじめてのおつかい 1
ヴァネッサがおつかいに行く話
「あら、困ったわ!牛乳がなくなっちゃった!」
声のする方を見ると、ルッスーリアが眉根を寄せて冷蔵庫の中をのぞき込んでいた。
「牛乳・・・買ってくる!」
ソファに行儀よく座っていたヴァネッサが手を挙げてそう言うと、周囲にいた大人たちがいそいそと準備を始めた。
「ヴァネッサ様、不審者が現れたらこのボタンを押してください!!!」
レヴィがいつかジャッポーネで買った防犯ブザーを渡す。子供の手の中にすっぽり収まるサイズだというのに、これが中々高性能らしい。大音量でブザーが鳴り、尚且つ登録した電話番号にお知らせの電話がかかるのだという。
「お金はここに入っているから、お店の人に渡すのよ」
ルッスーリアが愛らしい鮫の形をした財布を赤いエナメルの丸いポシェットに入れた。このポシェットはヴァネッサが3歳になった時に父親が買ってくれたもので、ヴァネッサのお気に入りだった。
「シシシッ!レディだからね、ハンカチとティッシュも入れといてあげるよ!」
ベルフェゴールが白いフェレットのアップリケのついたオレンジ色のタオルハンカチとポケットティッシュを用意した。
彼の肩にはアップリケとそっくりのフェレットが乗っていて、機嫌が良いのか主と同じように笑みを浮かべているようだった。
「地図は読めるね?タダで用意してあげたよ」
マーモンがヴァネッサへメモを手渡した。
「気をつけて行っておいで。」
スクアーロがヴァネッサの手を取って玄関へと導いた。
その様子をシルヴィアが不安げに見ていた。
(ヴァネッサ一人でお使いに行くなんて初めてよね?)
「ねぇ、ママン。私も・・・」
「シルヴィアはお留守番だぞぉ」
ヴァネッサに向かって手をふりながらスクアーロは笑顔のままシルヴィアにそう言った。
幼いヴァネッサがヨタヨタとしながらも門を出て行くのを見守っていると、その少し後ろを黒い影が着いていくのが見えた。
「ママン、今・・・・」
「な?大丈夫だぁ。」
スクアーロがにっこりと笑うと二人は屋敷の中へと入っていった。