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‖あまいにわとり

ザンスクと食事と心情









食事の手を止めて、彼は言った。


「お前は苦そうだ。」


それはあまりにも唐突で、瞬時に意味が理解ができなかった。「何が」と聞こうかとも思ったが、出かかった言葉を口に入れたままのオリーブの実と一緒に飲み込んだ。鼻からその香りが抜けて、消える間に考えを巡らせる。



スクアーロの向かいに座った艶男は、丸々太った鶏肉を前にそう言ったのだ。ならばおそらく、スクアーロと鶏の味を比較したのだ、と推察する。いや、きちんと納得できたわけでもないが。


「…食べたいと思うのかぁ?」

俺、を。


スクアーロが鶏肉を切り分けながらそう呟いた。ナイフを入れた丸鶏は旨汁を溢れさせながらただの肉片へと変わる。


「お前は食べねえよ」


「ふぅん?」


その答えに安心したようながっかりしたような、複雑な気持ちで肉を乗せた皿を渡した。



「お前は鮫だろう」


「はぁ゛?」


「お前は、鮫だろう」



再び飛び出した突拍子もない言葉に、スクアーロは眉根をひそめた。


「鶏は鶏だ。」


「…ああ゛。」


「鶏は飼育され、肉になる」


スクアーロが空になった主と自分のグラスにワインを注ごうとすると、彼は顎で制止のサインを送った。それを解したスクアーロが手を止める。


「まぁ、大体はそうだろうなぁ」


「お前は?」



「なんで比較したいのかわからねぇけどよ、飼われてるつもりもないし肉になる気もねぇぞぉ?」



ザンザスの目がスクアーロを射殺すように見つめながら双方のグラスに注いだワインが赤く揺れた。





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