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‖彼と彼と彼

でぃのひばってる





彼の名前は随分と前に聞いたけれど、忘れた。
だって、覚える必要がないからね。


「カッフェでよかったかぁ?」

長い銀髪を揺らして、彼が僕を覗き込む。返事はしなかったが、そのままカップが前のテーブルに置かれた。

(こんなこと、頼んでない)


カップからは湯気が立ち上げ、良い香りがする。しかし、口をつけるつもりはない。
銀髪の彼は気にした様子もなく、斜め前のソファに座った。


「お前も大変だなぁ」


不意に彼が話かけてきたが、チラッと視線だけで彼を見ると、彼は手元の書類を読みながら呟いただけで、僕に話しかけたわけではないと結論づけて何も言わなかった。


「…お前だよ、キョーヤ!お前協調性ねぇなぁ」


「協調性なんて、群れにしか必要無いだろう?僕は群れるのが嫌いだ」


“キョーヤ”と呼ばれて少しムッとした。それはスクアーロ達に取ってはきっと何気ない事なのだろう。


「ふーん?跳ね馬はいいのかぁ?」


「彼もいずれ咬み殺す」


この銀髪の彼を、跳ね馬が特別気にかけていることを知っている。そして、雲雀をここに置いて行ったのもその跳ね馬だった。

(信頼してるって?)



緊急の会議だかなんだか知らないが、わざわざイタリアくんだりまで連れてきておいてどういうつもりだ、と頬を膨らます。

「う゛ぉぉい。拗ねるなぁ、もうすぐ帰って来る頃だぁ」


「別に拗ねてなんかないよ」

スクアーロが笑いをこらえながらそう言ったので、更に雲雀は不機嫌になった。


「あぁ、悪かったなぁ。拗ねてんのは俺だぁ」


(!?)


「アナタ大人なのに弱虫なんだね」


そう言ったその時、バターンて音を立てて扉が開いた。


「ただいまー!ごめん恭弥!待たせた!!!」


騒がしい金髪の彼がバタバタと入って来たその後ろを、漆黒の男がのそのそとついて入って来た。


「おかえり、カッフェ飲むだろぉ?」


銀髪の彼が、聞くのと同時に既に温めたカップを用意していた。


「スクアーロ、俺のも頂戴!」

「おう………!?」

ディーノがそう言った途端、彼らのボスはさっき腰を下ろしたばかりだというのに、立ち上がり銀髪の彼を連れて部屋を出て行ってしまった。


「ふーっ…嫉妬しちゃってヤダヤダ」


ディーノが、ザンザスに出された手付かずのカッフェに口をつけて雲雀を見て笑った。


「寂しかった?」





勿論すぐさまトンファーで頭を殴打した。




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