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‖メリーゴーランド
子供ジルベル
暗い&短い
ジルは、いつも真っ先に冠を乗せた白馬を取るんだ。
そして満足げに長い前髪の間から見下ろしてこういう。
「だって、俺王子だし」
「俺だって王子だし、白馬にも乗りたいよ」
ベルがシャツの袖をギュッと握った。ジルを乗せてメリーゴーランドが動き出す。
「待って!」
慌ててベルが手を伸ばした。
「待ってよ!」
追いかけても追いかけても追いつかない。
ベルの目の前でジルを乗せた白馬が円座を捨てて駆け出す。
ベルはそれを追って必死で走った。
白馬は瞬く内に遠くまで走り去り、とても子供の足では追いつけそうにはない。
息荒くヘトヘトのベルの足はもつれ、ついには転んでしまった。
「お前はまだだめだ」
ジルの声が風に乗って聞こえ、気付くと泥だらけのベルの手の中には冠が一つ、光っていた。
「…ズルい」
そう呟いて冠を地面に埋めた。
完