泣き虫











偵察に行っていた不動君と壁山君から雷門が危ないって連絡が入った
もしかしたらもうあいつ等に連れて行かれてるかもしれない‥、最悪な展開を想像すると身体が小さく震えた
そんな私をしろくんは「大丈夫だよ」って優しく微笑んでくれて手を握ってくれた









「居た!あそこだ」

「キャプテン、どうするよ あいつ等連れて行かれそうだ」

『僕に任せて!シュートで砂煙を巻き上げるから、その間に皆はあの子たちを救出してよ、由紀は僕にパスをだしてくれないかな?』











由良も私を元気付けようとしてくれてるみたい
ぱちりと片目を瞑って頭を優しく撫でてくれた
こう言う所を見ると本当に適わないなぁって思うの









「よし、それでいこう 頼むぜ由良」

『任せといて!僕ら双子だってやるときはやるからね!ね?由紀』

『ええ、あの子たちの未来を潰される訳にはいかないもの』
  

 









ぐぐ、握り拳を作り俯むく
可笑しいなぁこんなにプレッシャーに弱い筈じゃなかったんたけど
年を取って可笑しく成っちゃったのかしら










「由紀」

『っ!な、なぁに?しろくん 私のことは心配しなくても大丈夫よだから気をつけて行ってきて?あの子たちの未来の為に』

「君は嘘を付くのが相変わらず下手だね」










しろくんに指摘されぎくりと肩を震わせる
多分バレてないだろうなぁ
だってちゃんと笑えてるものきっと大丈夫









「僕に嘘を付いても善いこと無いの分かってるでしょ?」

『え‥でも、本当に大丈夫なの』









へらりと笑って手を振って早く早くと急かせば「‥後で覚えときなよ」って耳元で囁かれた
‥こう言う時のしろくんは特に怖いからずっと由良と円堂くんの所にいようかな










『由紀ー、準備出来たみたいだよ』

『あっ、うん!任せて、行くよー由良』









ドリブルをしながら由良のはるか上、頭上にパスをあげる
そのパスに『よっしゃこいっ!』と笑顔で言えば勢い良くジャンプした
空中で器用に一回転すればボールを垂直に蹴り落とす
べこりと地面が凹む程のシュートに相変わらず攻撃的だな、と考える
それでも砂煙がぶわりと巻き上がるのに合わせてしろくんたちが天馬くんたちの元に走り出す

きゅっと手を胸の前で握って祈るしか出来なくて何だか凄く悔しかった
しろくんたちを信じて無い訳じゃないのに
変な方向に行きそうな思考を頭を振って止める
いけない、今はそんな事してる場合じゃないもの






どうやら救出は成功したみたいで皆の腕の中には雷門の皆が気絶していた
気絶していたとは言え取りあえず無事なこの子たちを見れば凄く安心した
でも全然苛つきは収まらなくて、何を考えているの‥フィフスセクターは


天馬君を受け取りおんぶして皆と一緒に拠点にしていた洞穴に向かう











『‥由紀大丈夫なの?顔色真っ青だよ』

『へーき、私は何ともないの、真っ青なのも由良の気のせいだよ』










上手く笑えてるかな、でも嘘は言ってないよ由良
私は本当に大丈夫なんだもん、雷門の皆が受けた痛みに比べればどうってことないもの











『‥お前は相変わらず嘘付くの下手だね?吹雪にも言われてたでしょ』

『うっ‥!な、何でしってるの‥』

『片割れなめんなよー、壁山悪いけど由紀が抱えてる天馬君も抱えてやってくれないかな』

「お安いご用ッス!由紀さん、顔色悪いッスもんね」




  



ひょいと背中の天馬君を壁山君に抱えて貰うと幾分か胸の辛さが楽になった
私そんなに顔色悪いのかなぁ








「じゃあ俺は吹雪クンが背負ってる奴でも抱えますか、ほら吹雪クン由紀チャン抱えてやれよ」









ふ、ふっふふ不動君余計なこと言わなくてよろしいよ!
それになんか皆にやにやしてるし!!









「有り難う不動君、ほら由紀おいで」

『や、やだっ‥』

「由紀ってば‥」

『私は平気だもん!何で皆信じてくれないの!』









思わず叫んだ私の声は大きかったようで前の方を歩いていた円堂君や風丸君たちがびっくりして私たちを見つめ立ち止まっていた










「‥いい加減だだこねるやめろよ!解るだろ!?皆が君を心配してくれてこんな事言ってるの!何考えてるか知らないけど悩むくらいなら僕に言え!何のための夫婦だよ!!」









びくりと肩が震えたの、凄く分かったよ
しろくんがこんなに怒鳴るの初めてなんだもん
それに喧嘩したのも久し振りだね
最近構ってくれなくて寂しかったんだよ
私だけ好きだったらどうしよう、結婚して飽きられたらどうしようっていつも考えてたの
でもこんなに私のこと想っててくれたのね








『っひ、‥う、っく‥!うあああああ!!』

「え!?な、泣かないでお願い由紀泣きやんでっ‥」










寂しかったの




( ‥僕の片割れ泣かした )

( 不可抗力だよ! )

( じゃあ何であんなに怒鳴ったのさ! )

( そ、それは‥ )





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ようは寂しかっただけなんです
この何でもため込む癖は私に似たものですね(^-^)
暗くなってしまって申し訳ないです


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