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水面で揺れる、水面に揺れる




【水面で揺れる、水面に揺れる】


あの人が好きか嫌いかと言われれば、間違いなく嫌いだと答えるだろう。
例え百人中他の九十九人が好きだと答えたとしても。
 件の人物の名を、クラサメ・スサヤという。0組指揮隊長に相応しい実力に麗しい見目。
そんな自他共に認める「いい男」を何故好きになれないのか。
答えはまさに、そこにある。
自他共に認めるいい男なのだ。自他共に認めているのだ。自他共に。自分も。
そう、自分も!
 クラサメ・スサヤは所謂ナルシストである。他の誰が違うと言えども自分だけは知っている。
クラサメはナルシストだ。重度のナルシストだ。そしてそれを自分にだけ押し付けてくる。
私は格好良いだろう? 私は強いだろう? 惚れてしまうだろう? 当然だ、なんせ私だからな。
 はっきりいって、ない。
 だから絶対に認めてやらないのだ。例え本当にイケメンでも否定してやるし、強くてもケチをつけてやる。
それに、惚れてなんていない。惚れてなんて、いない。
好きじゃない、クラサメなんて好きじゃない。当たり前の事ではないか。
 だって二人とも男で、そして、クラサメはナルシストなのだから。
 だから目で追ったりも、していない。していないったらしていない。
もう何度だって繰り返させてもらうが、他の誰がしていると言っても、こちらがしていないといったらしていないのだ。
今だってほら、目があったりなんてしてないし、ちょっと翡翠が優しく微笑んだのにも気付かなかった。
気付いてないったら! 格好いいなんて、絶対に、思わなかった!
 そして更に細められる瞳。こっちの反応に気付いた、いや、反応したと思ったのだろう。
クラサメ隊長の自意識過剰、ナルシスト!

 それでもあの僅かな変化を認められるのは自分だけだろうな、なんて。


 あんたがそんな振る舞いばっかりしているから、思わずにはいられなかったじゃないか。





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[mokuji]











 


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