lache einmal mehr(4) |
「ビッテンフェルト!ワーレン!」 息せき切って談話室に飛び込んできた同級生の姿を認め、二人は手を挙げて存在を示した。 「ハアッハアッ、ロイエンタールは!」 二人のそばに駆け寄ってきたのはロイエンタールと同室のマイアーだった。 「ロイエンタール?あいつならついさっき部屋に戻ったぞ?」 「戻ってないんだ。いつもなら戻ってきているのに・・・、で、僕、心配になって探しにきたんだけど」 「はあ?心配?あいつは子供じゃないぞぉ?」 「違うよ!」 ビッテンフェルトのからかいを、マイアーは真剣な表情で否定した。 「あいつ、上級生やお貴族様から目を付けられてるんだよ!今までだって何度も危ない目に遭ってるんだ」 「危ない目って、あいつは強いぜ?それになんで目を付けられるんだ?何か悪いことでもやったのか?」 「違う!わからないのか?ロイエンタールはとっても綺麗だろ?・・・」 「ああ、そういうことか!」 合点したのはワーレンの方である。ビッテンフェルトは隣で目を白黒させて事態が飲み込めていないようである。 「ロイエンタールは部屋に戻ったはずだ。しかしマイアーはロイエンタールに遭っていない。通路は一本しかない。行き違うということも時間的に考えてないと思う。」 「僕の前をゲオルギー先輩が歩いていたと思うんだけど・・・、ここにはいないよな?あの先輩。最近よく見かけるんだ。ちょっと離れたところから、ロイエンタールをよく見てた」 「!!。あの先輩か・・・。いい噂は聞かないな。」 二人の会話を珍しく黙って聞いていたビッテンフェトも、ロイエンタールが今何かの危険にさらされているかもしれないということを察した。 と同時に駆けだした。何かあると気づいてじっとなどしていられない。即行動がビッテンフェルトのモットーだ。 後から同じように駆けてきた二人とともに、ある一角にさし当たった。そのときワーレンが 「待て」 と制止した。静かだが力強い声の調子に、二人は無言で従った。 「ここ」 言いながら視線でワーレンは三つ並んだ扉を示した。遠方からきた生徒の家族などが宿泊するための部屋だ。もちろん、そう頻繁に使われることはなく、今日も使用予定は入っていないことは、寮生ならば誰でも知っていた。 「まさか!?」 「勝手に入れないだろう?」 「と、思うのが普通だな。でも普通じゃないやつは普通じゃないことを考える」 ワーレンは一番手前の扉を無造作にあけて見せた。定期的に掃除や空気の入れ換えをするために、鍵はかけられていない。 中央の扉も同じように音もなく開いた。しかし、最後の扉は同じように押してみてもぴくりとも動かなかった。内側から鍵がかかっている。 「!!」 三人は無言で顔を見合わせた。 「鍵か!くそ!」 ビッテンフェルトは吐き捨てるように言った。 ワーレンは落ち着いて扉についているナンバーロックのキーを押した。 「普段使っていない部屋は、みんな初期設定のままなんだ」 変更されているなよと祈るような気持ちで初期コードを入力すると、ピーッと小さく電子音がして開鍵されたことを示した。 ぎりぎりと腕を締めあげられ、肩や肘の関節が悲鳴を上げていた。痛みに気が遠のきそうになるのを感じ、ロイエンタールは意識して体から力を抜き、痛みを逃そうと試みた。 ロイエンタールを背後からなぶっていたゲオルギーは、締めあげていた体から力が抜けたことを、自分の行為を受け入れることを了承したものと解釈した。 「そうだ、抵抗しなければ、よくしてやるよ」 ゲオルギーはロイエンタールの顔が見たいと思った。遠目からでは判然としなかった有名な金銀妖瞳を見ながら、この獲物を味わいたいと思った。 後ろ手に捻っていた腕を解放し、くるりとロイエンタールの体を反転させ、前方から首をつかみ体を密着させた。 唇をむさぼるように吸い上げた後、顔を離してロイエンタールの顔を間近で眺めたが、あいにくと日が沈みきった室内には闇が充満しており、闇に慣れた目でもほのかに輪郭が伺える程度である。 ゲオルギーは素早く室内を見回すと、カーテンの隙間から街灯の明かりが漏れ入っているところを発見した。自分の思いつきにいい気になったゲオルギーはもう一度唇を奪い、まるでことを連想させるような腰の動きでロイエンタールをなぶったあと、 「ベッドに行こう」 ゲオルギーはロイエンタールから少し体を離し、力任せにベッドに押し倒そうとした。 体が離れる、この時をロイエンタールは待っていた。 |