企画BOOK 01 [1/1] どうしよう。 「ふぁ……んっ」 気持ち良くて堪らない。 膝の上に高校の卒業アルバムを置き、左手は自分のものを握りしめ、一心不乱に扱き上げる。 「ああ……い、いくっ」 後ろに伸ばした右手の中指は、ほんの少しだけ入口を潜っている。 これ以上は無理だ。感じているのは恐怖心と言うよりは、これ以上進むと引き返せないという類の危機感のようなもの。 だけどどうせ進むしかないのだし、と、覚悟を決めてその指を根元まで突き入れた刹那、 「ああっ!」 激しい射精感に襲われて、俺はいとも簡単に達してしまった。 「はあっ……朝のお勤め、終了」 指に被せた専用の指サックを外し、タオルで受け止めたそれをタオルごと洗濯機に入れて洗濯をすれば全てが終わる。 ああ、またやってしまった。社会人になってから、忙しさからか朝一に性処理をするようになった。生理現象でもある朝勃ちを治めるのも兼ねたそれはまさに一石二鳥、因みに夜は仕事で疲れ果ててそれどころじゃない。 やけに手触りのよい表紙を閉じて、思わず溜息を一つ。 我が母校、東雲男子学園高等学校は所謂、男子校だ。同性をおかずにしてしまったことに、俺はいつも背徳感が入り混じった罪悪感を感じてしまうのだ。 坂本葉(さかもとよう)、26歳。 とある文具メーカーに勤めるしがないサラリーマン。因みに自分が同性愛者であることに気付いたのが中学校に入学してすぐで、それからずっとこんな感じのことを続けている。 同性愛者は俗に言うにおいや雰囲気で同族だかどうだかがわかると言うが、生憎、俺はそんな便利で素敵な感性は持ち合わせていなかったようだ。 だからずっと片思い専門で。当然だけど童貞で。しかもしかも、女の子になりたいわけじゃないけど、俺は誰かを抱きたいんじゃなくて、抱かれたいほうなわけで。 そんなこんなで、一生童貞確定。それば別にいいんだけど、後ろの処女だけは早く捨ててしまいたい。 「やっぱハッテン場に行くしかない、か……」 しかし、やはり初めては好きな男とやりたいし。 どうせなら俺を愛してくれる男がいいし、まあ、26年間、一度も恋人が出来たことはないんだけども。 いろいろと相談に乗ってくれる会社の先輩いわく、俺はゲイ受けする美人さんなんだそうだ。自分ではよくわからないが、子供の頃はよく女子から男女と呼ばれて虐められていたっけ。 中学時代はとうとう目覚めてしまって、正直、自分がどう思われているかなんてどうでもよかった。子供の頃から目立たない性格で、サッカーだけは好きだったけど、それ以外は教室でも読書してたい。そんなやつで。 初恋は小五の時。それに気付いたのが中一の時で、そのきっかけは相手に彼女が出来たことがだった。つまりは、初恋と失恋を同時に経験してしまったわけだ。 思えば好きになるのはいつも同性で、今は高校時代に部活が同じだった同級生に未だに片思いしていたりする。 「あ、やばっ。急がないと」 時間はいつの間にか家を出ないといけない時刻で、取り敢えず、鞄を引っつかんで家を出た。 ←前のページ(*) (#)次のページ→ 1/1ページ [一覧] |