Commemoration | ナノ


深夜介抱(アルレイ)






このリーゼ・マクシアの地図にも載っていない場所に、幻の秘湯があると言われている旅館があるらしい。

ミラも知らなかった場所だ。


一行は興味を持ち、行き方はどうするかと話になり、シルフの力を借りて行ってみようということに落ち着いた。

シルフを説得するのに、大分時間がかかりはしたが。


そこは秘湯があると言われているだけあり、とても神秘的な場所だった。

温泉というものに入ったことがなかった為、すごく興味がそそられた。

1番目が輝いていたのは、レイアだった。


早く行こう、と周りの皆に訴えて、一同は温泉に浸かることにした。

地下から湧き出てるなんて、思えなかった。
けれど、いつも浸かっている湯舟とは、明らかに違っていた。

身も心も綺麗に洗われていく気がしていた。


そして、ミラやエリーゼと共にお風呂に入るのは初めてだったし、少々恥ずかしかった。

自分がずっと、憧れてやまないミラ。

彼女の体を、レイアはエリーゼと一緒になってじっと見つめてしまった。

バリボーと言われる理由もわかる。


胸は大きくて、ウエストもくびれていて、ヒップもいい形をしている。
まさに憧れだ。羨ましい。


「そんなに見るなよ」

「見ちゃいますよ」

「本当、ミラが羨ましいな」



自分もミラと同い年になったら、多少なりとも、胸も大きくなったり、体も多少は成長しているんだろうか。

理想の大人になれているだろうか。

そんなことを考えつつ、女子三人は、温泉をまったりと満喫した。




みんなが寝静まったころ、レイアはせっかく来たから、もう一度入りたいと思い、大浴場へと向かっていった。

外の露天風呂に向かい、熱い湯舟に浸かり、再び温泉を楽しんでいた。




(……なんて、あいつが)



その露天風呂には、先にアルヴィンが浸かっていた。
確かに深夜を過ぎたら、混浴になるという話を、入口にいた客から、耳にはしていた。仕切が外れてなくなり、広々と浸かれるのだ。

ちょうどよく岩があり、アルヴィンは岩影に隠れて、その場から動かずにいるしかなかった。

湯気で確認できないだろう、とそれだけを願った。
バレたら確実にフルボッコにされるだろう。
混浴の時間だった、と言っても多分信じてもらえない。


(……やれやれ、こりゃあ、隙をついて出るしかないな)


湯気のせいで、レイアの姿も、はっきりと確認できるわけではなかった。

だが、つい、見ないようにしようとは思っていたが、どうしても視線が、そっちにいってしまう。


何か、他のことを考えようと、いつもは絶対に考えないようなことを、マジメに考えてみる。


しかし、暑い。
これはもうすぐ限界かもしれない。
レイアは上がる気配はないのかと、アルヴィンはまた、レイアの方を見た。

レイアのいた場所に、人影の気配が感じられない。
上がったかと思い、アルヴィンは、湯舟から立ち上がり、髪をかきあげると、入口へと足を進めていった。

そして、湯舟の端の石の上に、べったりと寄り掛かっている人がいる。
小さめな体から、女性とアルヴィンは判断する。

こんな所に寄り掛かっていて大丈夫なのか?と、アルヴィンは女性に近づいていく。


「おーい、お嬢さん、大丈夫……」



アルヴィンが女性をそっと起こすと、その女性の顔を見て、驚愕した。

それは、先に上がったと思っていたレイアだった。


「おい、レイア!」



アルヴィンはレイアの頬を軽く叩きながら、レイアを起こそうとした。


けれど、目を覚まさない。
じっと見てみると、顔や体が真っ赤になっている。
きっとのぼせたのだろう。


レイアが楽しみで興奮していたのは知っていた。
ミラ達と湯舟に浸かっていた時も、長く浸かっていただろうに、こうして露天風呂にきて、また浸かって。

レイアらしいといえば、レイアらしい。


とりあえず、レイアをここから連れ出さなければと、アルヴィンはレイアを湯舟から引きずりだし、抱き抱え、露天風呂を後にした。

レイアの荷物は女子脱衣所にあるため、入ることはできない。
かといえ、この濡れたタオル一枚に包まった彼女をそのままにしておくわけにもいかず、アルヴィンは自身のバスタオルにレイアを包み、自身の浴衣内に、彼女の体を隠し、抱き抱えて、入口へ向かった。

フロントに頼み込み、また別の部屋を取り、とりあえず、レイアをそこに連れていくことにした。

一人用の部屋だったので、狭いが充分だった。

このままでは、レイアが風邪を引いてしまうので、既に敷かれていた布団にレイアを寝かせる。

無表情のまま、アルヴィンはレイアに巻かれているタオルを一枚取り、濡れているタオルも取り払った。

すぐにタオルで裸のレイアの体を隠す。惜しいと思いつつも。

そして体を起こし、レイアに浴衣を着させる。
ぽたぽたと、髪の毛の雫が、アルヴィンの皮膚に当たる。

お湯だった雫は、既に冷たくなっていた。
でも、レイアの体はまだ、熱を持っている。


レイアをまた布団に寝かせ、アルヴィンは小さいタオルを水に濡らして、レイアのおでこへと載せた。

さっきフロントで借りたうちわで、レイアを扇ぐ。



「ったく、俺だったからよかったものの、本当目を離せないよな、おたくは」



アルヴィンは呟く。
俺じゃない異性に、レイアの体を見せるのは許さない。

彼女を介抱したのが自分で、本当によかったと思った。



「ん………あれ……」


やがて体温も落ち、レイアが目を覚ます。
ここはどこだろうか、先程まで露天風呂にいたはずなのに。



「起きたか」


アルヴィンがレイアの顔を覗き込む。


「え……アルヴィン、くん……?なんで……」

「なんでじゃねえだろ、覚えてるか、おたく、露天風呂でのぼせてたんだよ」


アルヴィンの言葉から、ああ、確かそうだったな、とレイアは思い出す。


「で、なんで、ここに……」

「俺もそこにいたから」

「俺もって……え、どういうこと?!女子風呂でしょ!?まさかアルヴィン君、覗き……?」

「ちげーよ、バカ。深夜は混浴になんの。半分仕切があるんだけど、深夜は外れてるらしい」



知らなかったとレイアは言った。
そしてアルヴィンが来てくれなかったら、自分は湯舟にいたままだったかもしれない。


「ごめん、迷惑かけて」

「別にいいけどな、気をつけろよ」



アルヴィンは側にあったミネラルウォーターを口に含み、レイアへと口づけ、彼女の体内へ、ミネラルウォーターを流し込んだ。


「っ……!」

「喉、渇いてただろ?」


にやにやしながら、レイアを見るアルヴィン。
レイアは唇を腕で隠し、アルヴィンを見つめた。

気を抜いたら、いつもそうだ。

何かしら、ドキドキさせられる。





「ところで、見て、ないよね……?」


恐る恐るレイアが聞くと、アルヴィンが先程と同じ顔をしながら何も言わなかったので、レイアは見られたんだと思い、ここから逃げ出したくなった。



「俺以外、見ないんだから、別にいいだろ。つか見せさせないけどな」

「ちょっ……もう、そういうんじゃなくってさー………」




多少の女心をわかってよ、とレイアは心の中でアルヴィンに訴えた。





―――――――――
アルレイで本編ではなかった温泉ネタ。のぼせたレイアを介抱するアルヴィン(匿名様)

今回はリクエストありがとうございました!
拙い文ですが、楽しんでいただけると嬉しいです。


2011.10.13



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