傍にある安心(ジュレイ)
幼なじみだから、相手のことは全部知っているわけではない。
同じ時間を共有した年月が多くて、確かに仲良しではあるけれど、それ以上でも、以下でもない。
たまに、レイアはそんなことを考えた。
久しぶりに母親にジュードと稽古をつけてもらい、その時、やっぱり、ジュードは変わったなと思った。
戦闘経験を積んだ、というのもあるだろう。
護身術といえども、戦闘になったら、それを軽く飛び越えてしまう。
攻撃が最大の防御だ、というように。
ジュードの変化は、母ソニアも気づいていた。
さすが、長年見てきただけはある。
ソニアがジュードに何かを話しているようだったが、そこに割り込もうとせずに、レイアは練習場を抜け出し、飲み物とタオルを取りに行く。
先にいってしまう幼なじみに焦りや淋しさを感じることはあったが、レイアはそう思える自分が、なんだか嬉しかった。
変わらないことが幸せなことだとわかっていても、成長するに至っては、いろんなことを経験しなければ変わらないし、変わりたいなんて、思えないだろう。
そうしてレイアが練習場へ戻り、入ろうとすると、ジュードが掛け声をかけながら、武術を練習していた。
そのジュードの姿を見て、レイアは目を奪われた。
(本当……いつの間に、こんなに……。なんか悔しいな、ジュード)
昔から頑張り屋だったよね、ジュード。
努力家で、優しくて、お人よしで。
私がジュードを守ってあげなくちゃって、そう思ってたのに。
大人になっていくって、こういうことを言うんだろうな、とレイアは思った。
「レイア」
キリがよくなったジュードは動きを止めて、背後にいたレイアを呼んだ。
「レイア?」
「あ、わわわ、ごめん、ぼーっとしてた。ちょっと休憩しない?お母さんもそう言ってたから。はい、これ」
レイアはジュードにタオルと飲み物を投げた。
「ありがとう」
ジュードはそう言うと、汗だくになった頭や、顔等をタオルで拭いた。
やはり体を動かすと気持ちがいい。
久しぶりに稽古をつけてもらったおかげで、なんだか武術にも自信がついた気もする。
ジュードがその場にしゃがみこんだのを見て、レイアも一緒にその場に座り込み、飲み物を口にした。
「ジュード、すっきりしてるね」
「そう?」
「うん。昔なら、早く覚えなくちゃって、必死になってたじゃん」
「そうだったっけ」
「そうだよ」
「レイアだってそうじゃん」
「わたし?」
「ジュードに負けてたまるかーって」
「ああー……」
「でも、それがよかったんだろうね。正直、レイアと一緒に旅するようになって、いろんな意味で最初は心配だったけど、やっぱりソニア師匠の娘だよね、強くなったよ、レイア」
しばらくジュードとレイアは会話を交わしていた。
ジュードもレイアは変わったと言う。
いや、自分が気づいてなかっただけなのかもしれない。
彼女の心配ばかりしていたけど、結局レイアに支えてもらっているのは、自分の方だ。昔も今も。
「あ、当たり前じゃない」
ジュードに褒められて、レイアは照れくさそうに笑った。
「レイア、ありがとう」
ジュードは感謝の意をレイアに伝える。
「え……」
「僕はレイアと出会えてよかった。今までも、これからも、レイアは僕にとって、一生大切な人だよ」
そう言うと、ジュードは飲み物を一口、口にした。
言われちゃったな、とレイアは思った。
言葉の意味は、ちゃんとわかっているつもりだ。
近くにいるけど、遠い。
でも誰よりも近い存在。
自分が自分らしくいられる場所。
傍にいると、マイナスイオンが出ているくらいに、落ち着ける場所。
「もう、ジュードったら、何言ってるのよ。わたしも、ジュードが大事だよ。ジュードはわたしにとって、特別なひとだよ」
「うん、ありがとう」
二人はにこっと笑い合うと、飲み物を持って、乾杯し、それを飲み干した。
この空間を作ることができるのは、あなただけ。
「じゃあ、レイア、練習相手になってよ」
「もうしょーがないなぁ。手加減しないでよね!」
―――――――
ジュレイでほのぼの(匿名様)
タイトル・異邦人
今回はリクエストありがとうございました!
拙い文ですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
2011.10.11
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