Commemoration | ナノ


Although there is not room(ジュミラ)









精霊の王とリーゼ・マクシアの王。
やはり王という存在は逸材である。気品や風格が、他の者と比べても全然違う。

ジュードはガイアスと言葉を交える度に、彼にミラの面影を見た。
それはまるで、ミラと話をしているようにさえ思わされる。


その二人の王が、謁見の間にて、言葉を混じり合わせた。
会話の内容を聞く側に至っては、両者共に、重すぎて、やはり世界を束ねる者は違うなと、二人に尊敬の意を向けていた。


ミラもミラで、ガイアスとのやりとりが、とても楽しそうな様子を見せている。
アルヴィンとの時も思ったのだが、自分が入り込めない重要で尚且つ、ジュードが考えている大人の内容の時は、ミラはジュードには見せない顔をした。




「本当に貴様とは気が合わなくて困るな」

「それは違うな、気が合いすぎるからこそ、意見が相違しすぎてしまうんだ」

「なるほどな、その言葉には確かに一理あるよ」




言葉のぶつかり合いをし合っていたミラとガイアスであったが、それは、同じ世界を望む者同士だからこその、ぶつかりあいだ。

ミラはガイアスをできる男だと言い、認めているようであるし、ガイアスもマクスウェルが女と知りつつも、女だからとナメたりはせず、彼女を精霊の主として認めているのがわかった。



(僕は、この人には、敵わない)



そう自分へと言い聞かせて、納得しようとする。
それは彼の得意技だ。


僕には無理だ。
どうして無理なんだ?
まだ子供であるから?
二人のような、世界を統べる者ではないから?

ミラはガイアスにしているような話を、僕にはしてくれたことなどはない。

だから、仕方がないのかもしれない。



「マクスウェル」



用件は済み、話が一度途切れた所で、ガイアスは一度視線をジュードの方に向け、ミラの名を呼んだ。


「なんだ」

「俺との用件はこれで終わりだろう。ジュードを連れて来た理由は何かあるわけではないのか」



ジュードは顔を上げ、ガイアスを見る。
獅子の王者は、ジュードが今、どんな気持ちでいるのか、何を思っているのか、すべて見透かしているようである。

お前は隠しているつもりかもしれないが、そういうわけではないのだぞと。

またジュードも、ガイアスを見ては、すぐ目を逸らす。
ジュードもガイアスの思っている事がなんとなくわかり、恥ずかしさでここから去りたい気持ちでいっぱいだ。

気づいていないのは、ミラだけである。




「ジュードが一緒に行きたいと言ったんだ」



精霊の主は少年の肩をぽんと叩く。
ジュードは動かずにそのままの状態であった。

何故一緒に行くとか言ってしまったんだろうか。
わかりきっていたことじゃないか、自分が惨めになる思いをすることや、二人を見て、ミラを見て、辛い気持ちになることなど、わかってはいたのに。



「ジュード、お前にはお前だけにしかできないことがある。マクスウェルを信じてやるんだ、無論、俺の事もな」

「……!…………はい」


歯を食いしばるジュード。



「どういうことだ、ジュード」



ミラは首を傾げる。



「ごめんなさい、僕の用事はすみましたので、失礼します。あなたやミラのお話を聞けて、僕自身も、とても勉強になりました」



自分を押さえ込み、ジュードはやっといつもの表情で、ガイアスに頭を下げた。
ガイアスは腕を組み、それ以上は何も言葉を発することはしなかった。



「マクスウェル、貴様はもう少し、人の気持ちを勉強しろ」

「え、ちょっとまってガイア……」


まさか今自分が思っていることを、赤裸々にガイアスに語られてしまうのか。この人ならやりかねない、ジュードは声を上げてなんとかごまかそうとする。



「お前が思うほど、人はよくできてなどいない。人は脆く、はかない生き物だ。心があるようにな」

「何を言っている、私は」

「知りたければ本人に聞いてみるといい」

「本人……?」




これは完全に失態だ。
なんてことをしてくれたんだと若干、感情が濁りはしたが、それでも平静を保とうとするジュードを見ては、ガイアスは軽く息をつく。



「俺との用事は済んだだろう、早く帰るんだ」















謁見の間を後にした二人は、気まずい時間が流れていた。
城の外に出て、ようやくミラが一声発する。


「ジュード」


ガイアスの言ったことに対して何か言われてしまうと思ったジュードは、先に先手を打とうとする。


「話し合いできて、よかったね」

「よくなどない、君と話ができていないだろう」



そうだ、この顔だ。
平静と見せているものの、瞳に若干の曇りがある。顔も多少引き攣っている。

ジュードは何を思っていたのだろうか。
必死に考えて、やっと彼女は答えを見つける。

相槌を打っては、ジュードの両頬を軽くパンパンと叩いた。
ジュードは呆気にとらわれ、少しながらジンジンとしている頬を抑える。



「可愛いな、まったく」

「……からかってるの?」



ミラに自分の真意が知られてしまったのかと、そして可愛いと言われたことにジュードは少しふて腐れる。




「私を捕まえておくのは、大変か」

「難しすぎて大変だよ」

「何も難しい事などないだろう。私は君に捕まっているのだから。それに私も君を捕まえている。だから、私達はお互いから、逃げることなど、できないのだよ」





王と呼ばれる者は、どうしてここまで達者なんだろう。
少し心の器を大きくしようとジュードは誓った。




――――――――――
ジュミラでアルヴィンかガイアスのどちらかと仲よさ気に話すミラとそれに嫉妬するジュード(雪月風花様)

初めまして、杉菜です。おそらくお名前がお変わりなられていらっしゃいませんか??間違っていたらすみません。
ジュミラ長編、楽しみにして下さっていてありがとうございます。
今現在、滞っていて申し訳ありません。
また連載開始して、読んでいただけたら嬉しく思います。

今回はリクエストありがとうございました!拙い文ですが、楽しんでいただけると嬉しいです。


2011.11.12


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